独立性を強調する大陽日酸のプライド

三菱ケミカルの傘下に入る"うまみ"とは?

プライドの背景には、大陽日酸が背負ってきた歴史の重みがある。同社には、1910年設立の日本酸素、1918年設立の東洋酸素、1946年設立の大陽酸素という3つの源流がある。いずれの会社も工業用ガス一筋で事業を展開してきた。中でも、日本酸素は1954年に日本で初めて液化酸素の製造を開始するなど、国内のガス産業を牽引してきたという自負がある。

業績も回復傾向にある。2013年度は、鉄鋼業界向けの産業ガスが伸びたことに加え、エレクトロニクス事業のリストラが寄与して、売上高は前期比11.6%増の5227億円、本業の儲けを示す営業利益は同26.5%増の314億円と、大幅な増収増益を達成した。2012年9月に特殊ガスの共同製造事業から撤退し、巨額の特別損失を計上した苦い経験をはね返した格好だ。

TOB合意と同日に発表した新中期経営計画では、今後3年で構造改革、新規事業創出、グローバル化、M&Aに積極的に取り組み、2000億円の戦略的投資を行う方針を発表。2022年度までに「売上高1兆円、営業利益率10%、ROCE(使用総資本利益率)10%以上、海外売上高比率50%以上」という長期ビジョンを掲げた。

どのようなシナジーが?

むろん、乗り越えなければならないハードルは決して低くない。大陽日酸が合併を繰り返してきた歴史からも見て取れるように、ガスは装置産業、かつ、品質面での差別化が難しいこともあり、生き残りのために規模を追求することが不可欠だからだ。

新中計を取りまとめた市原裕史郎副社長(6月27日付で社長兼CEOに就任予定)は、「われわれの商売は規模を大きくしていかないとどうにもならない。現状は国内の売上高比率が7割だが、いつまでも国内を核にしていたら伸びない。現在17カ国で展開しているが、海外展開を加速していきたい」と、攻めの姿勢を強調する。

三菱ケミカルとの連携は、国内ではメディカル事業が有望視され、海外では米国でのシェールガス関連事業への取り組みが注目の的となっている。「たとえば、三菱化学さんが米国でエチレンプラントを建設して、うちがそこに産業ガスや窒素を供給できれば、Win-Winの関係になる」(田邉社長)。

昨年の第三者割当増資は、事業シナジーの創出と同時に、被買収リスクの解消という意味合いもあった。「金融機関への信用力も高まり、100年以上のブランドも維持できる。いろいろな競争のうえでも、三菱ケミカルの傘に入るのは好都合」と田邉社長。今回のグループ入りで、中計推進の素地は整った。

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