石油資源開発、「水圧破砕シェール」試験生産へ 年内にも日量約100キロリットルを想定

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まず5月22日から水平坑井の掘削作業を開始。垂直に掘った井戸を途中から曲げて、深度1330mの女川層に沿って水平に650メートル掘り進める。この作業を6月下旬に終了。その後、フラクチャリングの詳細設計に着手し、今年11~12月には水平に掘った区間でフラクチャリングを実施する予定。それによって年内にもシェールオイルの生産が始まる。

フラクチャリングというのは、化学物質を含んだ水を高圧ポンプでシェール(頁岩)層に圧入してヒビ割れを作り、そのヒビに支持材の砂を充填してシェール層中の原油が流出しやすくする方法。水平坑井の区間で間隔を開けて5回にわたり行う。そのため多段フラクチャリングという。今回圧入する水の成分は、99%以上が清水で、粘土膨潤防止剤やゲル化剤、界面活性剤、殺菌剤、ph調整剤などの化学物質が0.6%強含まれる。

掘削作業は石油資源開発の100%子会社であるエスケイエンジニアリング社が行う。一方、フラクチャリング作業は専門性が高いため、米国のハリバートンやシュルンベルジェなど実績のある外国企業の中から業者選定が行われる予定。これまで地層調査に強みのあった石油資源開発としては、今回の実証試験を通じてシェール開発の新たな知見やノウハウを吸収し、参画している北米の開発プロジェクトなどで生かしていきたい考えだ。

住民説明会も実施

フラクチャリングでは環境対策にも万全を期す必要がある。世界的にも米国を含め規制強化の方向にある。想定されるリスクは、化学物質を含む作業用水による地下水や土壌の汚染、高圧ポンプによる騒音や大気汚染、地震の誘発など。石油資源開発では、昨年9月に第三者の有識者による「福米沢環境対策検討会」を設置し、周辺環境に対するリスク評価を行った。

その結果、今回の作業計画において一連の環境対策が確実に実施されることで、環境リスクは極めて低いレベルにとどまるとの結論を得た。また、周辺地域の住民や関係自治体に対しても、数次にわたる説明会を開いて理解を得たとしている。実証試験の期間中も地下水の水質調査を継続して行い、万一、何らかの異常が発生した場合は即座に作業を中止する方針だ。

一方、秋田県は石油や天然ガス開発のほか、地熱発電や風力発電などエネルギー産業の育成に力を入れている。日本初となるシェールオイルの県内生産に対する期待も高い。佐竹敬久・秋田県知事は4月の記者会見で、「秋田のエネルギー資源の多様化に非常にプラス。一定の雇用効果、あるいは周辺のメンテナンスも含めて産業として地元経済にもプラスになるので、大いに歓迎している」と述べている。

もちろん、今回の実証試験が成功するという保証はない。想定したほどの生産量が見込めない可能性も十分ありうる。環境対策に万全を図りながら、安定的な商業生産へ移行できるか、今後の動向が注目される。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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