動き始めた「サハリンからパイプライン」構想 国富流出阻止が喫緊の課題

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2014年度に入り、安全確認のできた原発の再稼働への動きが出始めているが、全国50基中せいぜい17基程度にとどまる可能性が高い。石油や石炭などの老朽火力も総動員してなんとか電力需要をまかなっている現状では、CO2問題ばかりでなく、ほぼ沈静化していた大気汚染問題の再出来も懸念されている。PM2.5は中国から飛来しているだけではない。

再浮上したパイプライン計画

1998年の設立以来、長年、日ロ間の天然ガスパイプライン・プロジェクトの実現に力を注いできた日本パイプライン株式会社(JPDO)の小川英郎社長は、「もともとは北海道の主要産業であった石炭産業に代わるエネルギー事業として、天然ガスパイプラインに着目した」と言う。

サハリン南端から北海道北端までの43キロメートルが海底になるが、それ以外は国道、高速道路沿いにパイプラインを敷設。関東圏まで総延長1350キロメートルで、年間輸送量は200万立方メートル(1500万トン)。国内天然ガス需要量の17%(2013年度ベース)をまかなえる。

総費用は最大で6000億円。2015年着工、2018年の完成を目指し、この4月からフィジビリティスタディ(事業化調査)を開始した。出資は、JPDOが取りまとめ役となって国際コンソーシアムを組む。現時点で、欧米の大手資源開発会社や投融資機関など、数社が参画を予定しているという。

国内大手エネルギー企業はサハリンのLNGに絡んでいるために出遅れるが、プロジェクトが動き出せば参加企業も徐々に増えてくるとみている。経済産業省も、オプションのひとつとして期待しているという。

これまで、島国である日本は、天然ガス取引は全量をLNGに依存してきた。世界の天然ガス取引はパイプラインが主役で、LNGでの取引は全体の10%程度。その大半は日本の取引だ。

LNGは天然ガスをマイナス162度にまで冷却し、600分の1の体積に圧縮、液化しタンカーで輸送する。出荷側と受け入れ側双方に冷却・極低温設備が必要なうえ、専用のタンカーも必要だ。規模にもよるが、基地1カ所で数百億~1000億円、タンカー1隻で200億~300億円の初期投資が必要だ。加えて運転費用もかさむ。

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