インドで政権交代、日本への影響は? 地滑り的圧勝でインド人民党が10年ぶり政権復帰

拡大
縮小

実は、同氏の本当のカーストが何か、OBCなのかどうか、現在もわかりません。本人はこれまで自身のカーストに言及しておらず、細かいカーストは謎です。カーストが投票行動に影響するというのが、やはりインド的なところです。どちらにしても、低いカーストであり貧しい家で苦労し、実直に地方政治を行ってきたという事実には変わりありません。

これに対して、前政権の国民会議派にはまともな首相候補がいませんでした。ラフル・ガンディーという初代首相ネルーの血筋であるガンディー家の4代目が一応の候補となりますが、つねにモジモジしていて主体性がなく、実績も少なく、国民からは「頼りなく政治家には向いていない」と思われています。

つまり「選挙の顔」がモディしかありませんでした。これが政権交代の理由です。そもそもインドには「反現職要因」という選挙行動の特徴がありますが、早い話が「現政権へのノーを言い渡す」という投票行動のことで、今回はこの「再選させない文化」が強く働きました。

国営企業の民営化に期待

――モディ氏への期待は、どんなところにあるでしょうか。

「モディノミクス」というモディの経済政策に注目が集まっています。同氏は英国のサッチャー元首相や米国のレーガン元大統領の経済政策に影響を受けています。「最大のガバナンスを最小の政府で」という言葉を繰り返し言ってきました。新自由主義に近いです。

最も期待できるのが、政府のスリム化による財政赤字の削減です。さらに具体的に言えば国営企業の民営化、効率化です。これまで国営企業は非効率で赤字を垂れ流してきました。大規模な雇用を生んでいる半面、結局、赤字を税金で補てんし、通貨安によってインフレという代償を払ってきたのは国民です。

これに対して、モディが率いるグジャラート州は「グジャラート州石油開発公社」を筆頭に、石油、化学、肥料、鉱業などで、優良な州営企業がいくつもあり、黒字で運営しています。この「州営企業の存在感」というのはグジャラート州特有のものです。「国営企業改革を中心とした財政赤字削減」は、同氏だからこそ期待できるテーマです。面白いのが、モディの勝利を先読みするかのように、選挙期間中に中央銀行が「国営銀行の民営化推進をすべき」との勧告を出してきました。期待したいところです。

次ページ労働法改正でGDPが1.2%成長
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT