集団的自衛権の行使、「解釈改憲」では禍根 海外メディアも憲法9条との矛盾を指摘

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日本国憲法は米国の占領下という特殊な環境下で作られた。その誕生経緯からして、本来は英文で読むべきであるものである。そして、憲法を英文で読むと、こうした矛盾が一層、浮き彫りにされる。

第2項の一部を元の英文で示すと、以下のようになる。

 “land, sea, and air forces, as well as other war potential, will never be maintained.”

日本国憲法で日本語で書かれた「戦力」とは、もともと英文では「war potential」であることが分かる。war potentialとは文字通りに訳せば「潜在的に戦争を遂行できる能力」の意味だ。

多くの日本のハイテク企業が憲法上の疑義

では、「潜在的に戦争を遂行できる能力」とは一体どのようなものだろうか。連合国総司令部(GHQ)内に設けられた憲法制定会議の運営委員会のメンバーだったチャールズ・L・ケーディス陸軍大佐によると、「政府の造兵廠(ぞうへいしょう)あるいは他国に対し戦争を遂行するときに使用され得る軍需工場のための施設」を指す。同大佐は「戦争放棄」の条文を起草したと言われている。

war potentialが、かなり幅広い意味を有していることがわかるだろう。つまり、本来の意味では、事実上の陸海空軍である自衛隊の存在はもちろんのこと、戦闘機や戦車を量産してきた三菱重工業も、装甲車を製造するコマツも、「戦争を遂行するときに使用され得る軍需工場のための施設」を持っていることになり、憲法に反した行為となる。

現代の兵器はハイテク化が進む。ミサイルのシーカー(目標捜索装置)などに使用され、ビデオカメラなどに欠かせない「電子の目」CCD(電荷結合素子)を製造するソニーも当然、war potentialに当たり、憲法に反した製品を製造していることになり得る。現代の戦争で重要な役割を果たすC4Iシステム(指揮、統制、通信、コンピューター及び情報のシステム)に関わるNECや三菱電機、東芝、富士通、日立製作所など世界に名だたる日本のハイテク企業が製造している製品の中には、war potentialが多い。

そもそも、日本語の「戦力」であっても、現状の憲法解釈には大きな矛盾がある。振り返っていただきたい。小学生の高学年か中学生の頃、学校の授業で憲法9条の「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」との条文を読んだ時に、「あれ?でも、自衛隊があるじゃん?」と子供心に疑問を感じた人も少なくないだろう。筆者もそうだった。

日本国憲法の英文を読んだ外国人も同じように感じている。例えば、筆者の同僚であるジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー(JDW)のアジア太平洋担当のエディター(編集者)であるジェームズ・ハーディー氏は、15日の安保法制懇の報告書提出を受け、JDWの姉妹誌であるジェーンズ・インテリジェンス・レビューに以下のように書いた。

「(憲法9条は)“陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない”と述べている。日本の総勢24万5000人の自衛隊は明らかにこれに矛盾するものだ」

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