退院したトランプ大統領の猛反撃はあるのか バイデン氏次男のウクライナ疑惑追及も争点に

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マケナニー報道官(左)も感染が判明し、ホワイトハウスは集団感染状態の様相(写真:REUTERS/Joshua Roberts)

今後のポイントの1つとして今村氏が挙げるのが、投票先をまだ決めていない浮動層の動向だ。2016年の前回選挙では浮動票が2割近くを占めたと言われたが、現在は分極化の進展によって1割近くまで減っているという。そのため、「トランプ氏としては、ここから新規の支持層を開拓するのは極めて難しくなってきている」。

そうなると、あとは白人労働者など支持層の投票率を上げるしかないが、コロナ感染への不安感がそれを阻む。「自身の自主隔離で従来のような選挙集会も開けず、思うように支持率も投票率も上がらない可能性が増している」と今村氏は読む。

米政権内ではコロナの集団感染状態にあり、トランプ氏の妻メラニア夫人、側近のヒックス氏、マケナニー報道官のほか、ステピエン選挙対策本部長も感染した。選挙戦略上のダメージは小さくない。感染の拡大次第では、選挙態勢が総崩れとなる恐れさえある状況だ。

トランプ氏が起死回生を果たす要因としては、バイデン氏の健康問題がある。「バイデン氏は自分自身がコロナに感染しないよう、慎重に行動する必要がある」(今村氏)。同氏は現在77歳で、11月20日には78歳となる。74歳のトランプ氏よりも高齢であり、感染すれば重症化リスクは高い。選挙戦のうえで致命的ともなりかねない。

また、ギンズバーグ連邦最高裁判事の死去を受けてトランプ氏が後任に指名した保守派のバレット氏が選挙前に上院で承認されれば、支持基盤である保守派有権者に成果をアピールできる。最高裁判事で絶対的多数を得ることは保守派の「宿願」ともいえるが、「民主党からの承認延期要求は強く、共和党の上院議員も複数がコロナに感染しており、投票日までに承認されるかは微妙」(同)だ。

重要性増す副大統領候補の「対決」

慶応義塾大学の渡辺靖教授は、「トランプ氏が急速に回復すれば自らのタフさをアピールでき、“オクトーバーサプライズ”をプラスに変えることができるかもしれない」と指摘する一方、「自身がコロナに感染したことで、彼のコロナに関する発言だけでなく、コロナ以外の発言の信ぴょう性も疑問を呈される可能性がある」と話す。

問題は浮動層の動向だが、「たとえ急回復したとしても、トランプ氏にとってプラスというよりはマイナスに働くのではないか」と言う。

渡辺氏は、バイデン氏のみならずトランプ氏も健康不安を抱え込んだことで、10月7日(日本時間8日午前)に予定される副大統領候補同士の討論会の重要性ががぜん増したと見る。共和党のペンス副大統領にしろ、民主党のハリス上院議員にしろ、どちらも現時点で次の次の大統領に最も近い人物と言えるからだ。

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