変更必至の介護制度、今後の主役は市町村 若者に不利な現状、法改正は不公平改善の好機

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サービスの一部市町村移行は、「切り捨て」ではない

そんな中、今国会で審議中の法案には、「要支援者向けサービスを、市町村の事業に移行する」という内容が盛り込まれている。これには、様々な不安がすでに寄せられている。要支援者とは、要介護状態よりかは軽度だが健常者と比べればケアが必要な高齢者で、これまで介護保険制度の中で訪問介護や通所介護というケアを利用できるようにしていた。今般の改正では、要支援者向けの訪問介護と通所介護を市町村が実施する地域支援事業に移行することとしている。

この動きを見て、早くも「軽度者の切り捨て」との批判が出ている。しかし、ちょっと待ってほしい。法改正が成立した後でも、切り捨てると決めたのではない。見かけ上、市町村に移すという姿を見て、従来のやり方をやめて切り離していくかのように見えるが、そうではない。

そもそも、市町村の地域支援事業は介護保険制度の枠内のものであるから、改正後に介護保険の対象外にするわけではない。さらに、介護保険は市町村が保険者として責任を持ち、介護サービス事業者に対しても市町村が影響力を持っている。そして、市町村長や市町村議会議員は、地元の高齢者を含む有権者が選挙権を持って選んでいる。市町村が介護保険で気に入らないことをするなら、住民の力で首長や議員を選挙のときに取り替えて、望むようにするよう働きかければよい。

確かに、これまでの要支援者への訪問介護と通所介護は、介護保険制度の中でも全国画一的な仕組みで営まれてきた。だから、市町村の一存で全面的にやめてしまうとか、大きく異なるようなことはできなかった。介護サービスの事業者も利用者も、それに安心しきって、欲すれば訪問介護や通所介護ができる、と捉えていた向きがある。

次ページ改正で、市町村は独自色が出しやすくなる
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