変更必至の介護制度、今後の主役は市町村 若者に不利な現状、法改正は不公平改善の好機

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介護費用の9割を税と保険料で賄っていてそれらの負担を若い人にも求めながら、介護サービスを利用する高所得の高齢者は1割の負担でよい、という仕組みのままでよいだろうか。また、資産を多く持つが(利子所得や配当所得はカウントされない仕組みで)低所得とみなされる要介護者が、介護施設を使うときに食費や居住費の負担を軽減すべく給付がなされる、という仕組みも、今のままでよいだろうか。

こうした点は、今後高所得の高齢者や(利子所得や配当所得はカウントされずに)低所得とみなされるが資産家の要介護者に、軽い負担だったり給付を出したりすることは、さすがに改めようというのが、今般の改正での1つのポイントである。

地域包括ケアシステムは、構築できるか

もう1つは、地域包括ケアシステムの構築である。政府は、社会保障・税一体改革を進めるにあたり、介護分野においては「地域包括ケアシステムの構築」を前面に押し出した。ただ、多くの国民は、「地域包括ケアシステム」が実現できたら何がどう変わるか、イメージがわかないだろう。私の印象では、政府も推し進めながらどうするか考える、といった状態だ。

地域包括ケアシステムの形式的な説明は、既述の通りである。政府が推進してはいるものの、最終的には各地域でそれぞれニーズや人材等の資源を踏まえて独自に構築してゆくしかないものだから、全国画一的に上意下達で進めるわけにはいかないのだ。

地域によっては、医療機関が充実しているが介護施設が不足しているところもあれば、大きな病院や介護施設は少ないが地域コミュニティーがしっかりしていたり高齢者のボランティア活動が活発だったりするところもある。全国各地で医療や介護の状況はいろいろだ。だから、今ある人材等の資源や今後の高齢者のニーズを見極めながら、どうすれば老後の生活が落ち着いて営めるかを、各地で考えてもらわなければならない。中央省庁にお伺いを立てて、その指図を受ければうまくいくというものではない。

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