イギリス、韓国におけるインターネット選挙運動の歴史--解禁へ向け動き出したインターネット選挙運動[4]

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 「言論権力」とまで呼ばれた既存メディアに対抗したのが「オーマイニュース」をはじめとするインターネット新聞である。

大統領選挙前には2万人を超える「市民記者」が頻繁に記事をアップデートし、影響力を与え続けたのだ。もちろんこうしたネット運動は順調にいったわけではなく、既存メディアとの大衝突をもたらした。社説に対する批評に対し、朝鮮日報は一読者を告訴するまでに至ったという。


■オーマイニュース

http://www.ohmynews.com/


 こうした、02年大統領選挙における既存メディアとインターネットとの衝突が、その後に暗い影を落とす。05年の公選法改正により「インターネット実名制」が導入され、ネットの一つの長所である匿名での議論というものができなくなってしまったのだ。このため、02年に比べて07年は盛り上がりに欠ける大統領選になったとの論評も多い。

07年大統領選を特徴づけたのは読者投稿による動画サイトUCC(User Created Contents)だ。個人が面白い動画を作成してアップロード、若者全体で共有するという仕組みだ。

しかしこの運動も「インターネット実名制」導入により、いま一つ盛りあがりに欠け、多くは韓国選挙管理委員会による「サイバー監視部隊」によって削除される事態となってしまった。李明博(イ・ミョンバク)はUCC大統領と呼びたいところであるが、その効果が限定的だったことは否めない。

■李明博候補のUCC

出典:日本テレビNEWS ZERO ウェブサイトより
http://www.ntv.co.jp/zero/weekly-blog/2007/12/post_134.html


 このように、インターネットを政治に使ううえで、韓国は世界でも最先端の取り組みが進んでいた。だが、それがかえって従来の社会との軋轢を表面化させ、規制の強化を促すことにもなったといえる。

次回はフランスとドイツを俯瞰し、各国のまとめを行いたい。

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