「排泄予測デバイス」手がける異色企業の正体 ラクダ型スタートアップとして海外でも展開

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中西氏は、翌年2015年に日本に本社を置き、2017年にはアメリカの会社を支社化する。現在の同社の全社員数は30人。日本では研究開発・B2B販売、アメリカではB2C販売に注力し、中国やヨーロッパといった潜在的なニーズがある巨大市場への進出も検討している。

中西社長の原点となる「身近にいる起業家」、そして「成功した起業家の存在」が、実は起業促進に不可欠な要素であり、ラクダ型スタートアップの起業家の特徴ともいえる。 イノベーションと起業がさかんなアメリカや中国でもこの2つは重要な条件とされている。

両国の若者世代には、Facebook、Uber、WeChat、TikTokなどを活用して成功した起業家の知り合いがいる人が少なくはない。若者からは起業に対して「親しみ」、そして「成功へのあこがれ」といった感情が生まれる。

サラリーマンがほとんどで、起業家をめずらしい存在と見る日本の若者とはやや対照的にも思える。例えば、起業家ストーリーのテレビドラマ化、学校と連携した本格的な起業体験などを通して、日本でも「起業家の種」を身近に育む努力が大切になってくるかもしれない。

さまざまなビジネス経験が生きてくる

また、ラクダ型スタートアップの起業家の多くは、国境を越えた、コンサルティング、現地政府との連携研究など多様な経験を持つ。実際に起業する際に、ビジネスも、市場の状況も、そして技術もわかるため、投資家・政府目線での戦略作成と資金調達、業界での人脈づくりが可能になる。

そして彼らはコミュニケーション力も備えているため、起業する際に、いつでも相談できるメンター、ボードメンバーなどの人材が見つけやすい。Facebookの創設者のマーク・ザッカーバーグ氏のように「一発で起業に成功する大学生」も夢の1つかもしれないが、さまざまなビジネス経験を持つことは、企業を成長させるうえで有利になる。これについては、日本の中高年層のセカンドキャリア推進や働き方改革にもいえることだろう。

国際視野を持つスタートアップにとっては、現地人材も重要だ。中西社長は、グローバル人材を、「ビジネスや生活習慣・言葉においてローカルで、新規事業にコミットする人」と定義し、高柳太一氏をアメリカ支社の責任者として任命した。高柳氏はアメリカの大学を卒業し、日系企業の現地法人で20年間勤務したマーケティングのベテランで、「適材適所」だといえる。

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