米大統領選直前、10月株価は大きく変動するか アメリカ株は悪材料が増え不安がいっぱい?

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もう1つは、アメリカでの追加経済対策について、共和党と民主党の間で交渉が進んでいないことだが、これも足元でずっと続いていることだ。
とは言っても、新しく加わった政治面の不透明感として挙げられるのは、ルース・ベイダー・ギンズバーグ最高裁判事が18日に亡くなったことだ。彼女はリベラル派であり、これまで最高裁判事9名のうち、保守派5名、リベラル派4名といった形だった。

ドナルド・トランプ大統領は、後任に急いで保守派を充てる方針(承認には上院の過半数の賛成票が必要)で、26日にはウィスコンシン、インディアナ、イリノイの3州を管轄する控訴裁の判事を務めるエイミー・バレット氏を指名した。

バレット氏は妊娠中絶やいわゆるオバマケア(2010年にバラク・オバマ政権下で導入された、低所得者への医療保険加入を促す法改正)に反対で、個人の銃保有については賛成の方針だとされている。

民主党は現時点での最高裁判事の指名に反対しており、大統領選挙後に新大統領が指名すべきだと主張している。このため、共和党と民主党の対立が一段と激化し、追加の経済対策が一層成立しにくい、との観測が広がったわけだ。

ナスダックは反発、ドル円も下落後戻した理由とは?

このように、先週に追加で浮上した悪材料はあった。その一方で、根本的にはコロナ禍が景気に与える悪影響の懸念と、アメリカの追加経済対策の遅れといった、新しいとは言い難い要因で、週初のアメリカ株価は下振れしたと言える。とすれば、本格的な株価下落へ突入していくというより、投資家の心理面の不安による売りや、9月末を前にしたポジション整理といった、投資家行動の揺らぎが最大の株安の理由であったように思われる。

その後も、23日にアメリカの主要株価指数が大きく下振れするなど、軟調な地合いが残りはしたものの、24日、25日と続伸した。結果として、週を通じてのNYダウ工業株指数は、前週末比1.8%下落したが、最近先行きが懸念されていたIT関連銘柄の株価については、底入れ上昇の動きが生じた。このためナスダック総合指数は、週間では1.1%の上昇となっている。

こうしてアメリカの株価が総崩れにならなかったことから、シルバーウイーク明けの日経平均株価は、2万3000円を割れることなく推移した。それ以上に日本の株価を支えたのは、一時大きく下振れしたドル円相場が、持ち直したこともあっただろう。

前述のアメリカの株式市場に下振れが生じた21日は、ドルが対円で崩れ、一いったん1ドル=104円ちょうどを叩く事態となった。104円割れを覚悟した向きも多かったと思うが、実際にはそこからドル高円安に転じ、105円50銭を超える水準で週を終えている。

外国為替相場の底入れ反転については、アメリカの株価が軟調に推移したため、数多い通貨群のなかで相対的に安全だとみなされている米ドルが買われた動きだ、との解説を目にする。

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