テスラが「電池の自前化」にトコトンこだわる訳 提携先との関係曲折はパナソニックだけでない

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しかし同時に、EV用バッテリーパックの基本部品であるバッテリーセルの生産を自社で管理する態勢、つまり高度に自動化された2つの工場(1つはベルリン近郊に建設中、もう1つはカリフォルニア州フリーモント)に製造拠点を置く方向に動きつつある。

マスク氏は2004年、生まれて間もないテスラの経営権を握って以来ずっと、提携や買収、人材スカウトを通じて技術を十分に吸収し、自家薬籠中のものとしてきたと同社の戦略に詳しい関係者は証言する。

テスラの狙いはフォード・モーターが1920年代に導入した原料から完成車までの一貫生産態勢、つまり垂直統合型企業のデジタル版だ、という。

テスラのサプライチェーン担当幹部だったトム・ウェスナー氏は「イーロンはサプライヤーがやってきたこと全てを改善できると考えていた。文字通り全部だ。彼は逐一自前で製造したがっていた」と指摘する。

そうしたマスク氏の戦略にとっては、EVのコストの大部分を占めるバッテリーが中心的な存在になる。部下らはバッテリーセルの自社生産に何年も反対してきたのだが、マスク氏はなおも追求し続けている。

提携関係は曲折の歴史

テスラのある元役員の話では、マスク氏は2011年に社内のチームに自前でのバッテリー生産検討を指示。結局は13年になってパナソニックとの間で、ネバダ州の合弁工場「ギガファクトリー1」での生産協定を結び、パナソニックは最近、同工場の生産ライン拡張計画を打ち出した。

ところが今になって、テスラはフリーモントで試験的にバッテリーセル製造ラインを稼働させ、ベルリン近郊に本格的なセル製造施設を建設しようとしている。

テスラのこうした提携先との関係の曲折は、パナソニックだけの話ではない。例えば早くからテスラに出資していたダイムラーとの協力を進める中で、マスク氏は自動車の走行レーン維持に使われるセンサー類に興味を抱いた。

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