「インフルエンサー」は本当に使えるのか? なぜ、あの人のクチコミは影響力があるのか(2)

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似ている二人の間のほうがクチコミの影響力がある、というのは、直感的にも理解できると思います。このことを活用した企業事例としては、米国のbabycenter.comという子育てサイトがあります。ここでは妊娠・出産・育児に関するさまざまな情報が提供され、コミュニティが形成されています。

サイトの初心者がコミュニティに参加することは心理的なハードルが想定されますが、このサイトでは入会時に出産予定日や子供の誕生日を入力させることによって、同時期に出産予定だったり、子供が同じ成長段階にいる母親、つまり自分と似たステージにいる他者とすみやかに出会える仕組みになっています。

同様の取り組みは、花王の子育てサイト『GO GO pika★pika MAMAコミュニティ』でも行われています。

クチコミのカギは、「草の根インフルエンサー」

どのような二者間関係であれば、最適な情報格差によってクチコミが成立するのか。結論からいうと、消費者は自分と似ているか、自分より少しだけ上の人のクチコミを求めています。

筆者らの調査分析の結果は、少しだけ知識レベルが上の人から伝達される、定番情報と嬉しいサプライズの混合がクチコミ情報として望ましいことを示唆しています。あまりにかけ離れた人のクチコミは不確実性が高く、不安にさせます。一方、あまりに自分に近い人のクチコミは規則的で定番の情報ばかりとなり、新しい発見がないためにおもしろくありません。

情報の伝播の姿を見ると、高いカテゴリー知識を持った「スーパー・インフルエンサー」が君臨し、フォロワーたちへと情報が流れているわけではなく、さまざまレベルで多数の「草の根インフルエンサー」が存在し、小さな影響ネットワークが散在して情報の普及が起こっていることが明らかになりました。

従来考えられてきた影響力のモデルは、少数のインフルエンサーが君臨し、フォロワーたちに製品・サービスに関する情報が上から下へ流れてくるイメージです。ところが、筆者らの調査分析の結果浮かび上がってくる影響力の姿は、多数の草の根インフルエンサーが多様なレベルで存在するものです。

カテゴリー知識の高いレベルだけでなく、カテゴリー知識の中くらい、あるいは低いところでも草の根インフルエンサーがそのフォロワーたちに影響を及ぼしています。そして、インフルエンサーとフォロワーの間に、大きな格差はありません。つまり、消費者は遠いところにいる自分からかけ離れたインフルエンサーではなく、少し上の人の意見に影響を受けているのです。

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