「根っこ」を強く JINS社長の経営論 ジェイアイエヌ社長 田中仁(上)

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三宅:ビジョンや志からアイデアが出てくるという意味ですか。

田中:そうです。「どういう会社になりたいか」が明確になれば、「どんなものを開発したいか」も、明確に出てきます。ところが昔はつねに競合のことばかり見ていた。「根っこ」を強くせず、商品やサービスだけで戦っていたのです。でも商品やサービスは、木で言えば、葉っぱや果実の部分なんですよね。

そうすると根っこが小さいままだから、そこにいろんなものを足していっても、ぐらついてしまう。「あっちの店がりんごを作り始めたから、うちも急いでりんごを作ろう」「こっちの店がバナナを作っているなら、うちも作らなければ」「そっちが柿ならうちも柿だ」というように、もう何をしたいのかわからない状態になります。

しかし、りんごの根っこからバナナは生えないじゃないですか。柿は実りませんよね。「根っこ」が決まると全部決まってくるのです。そのことに気がつきました。

三宅:「根っこ」を強くするために、社内では具体的にどんなことをやられたのですか。

田中:合宿をしました。役員5~6人と、あとマーケティングチームの合計7~8人で。

三宅:合宿して一晩じゅう徹底的に話し合ったら、新しいアイデアがポンポンと出てくるようになったということですね。合宿の前から、ひたすら自分たちの「根っこ」は何かを考えていたわけですか。

田中:考えていました。そして「こういう会社になろうよ」というコンセンサスがこのとき取れたわけです。私はその前からも「こういう会社になりたい」という「根っこ」を持っていたかもしれない。でもそれをみんなで共有できていなかった。そういう意味では有意義な合宿だったと思います。

三宅:自分たちの「根っこ」が明確で強いものになるほど、アイデアもより出やすくなるということですよね、きっと。

田中:不思議とそういうものだと思います。だからわれわれは、まだこれからいくらでも新商品のネタを持っていますよ。

(構成:長山清子 撮影:尾形文繁)

※ 続きは、5月21日(水)に掲載します

三宅 孝之 ドリームインキュベータ執行役員

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みやけ たかゆき

京都大学工学部卒業、京都大学大学院工学研究科応用システム科学専攻修了(工学修士)。経済産業省、A.T. カーニー株式会社を経てDIに参加。経済産業省では、ベンチャービジネスの制度設計、国際エネルギー政策立案に深く関わった他、情報通信、貿易、環境リサイクル、エネルギー、消費者取引、技術政策など幅広い政策立案の省内統括、法令策定に従事。DIでは、産業プロデュース事業を統括し、環境エネルギー、まちづくり、医療などを始めとする様々な新しいフィールドの戦略策定及びプロデュースを実施。また、個別プロジェクトにおいても、メーカー、IT/通信、金融、エンタメ、流通、サービスなど幅広いクライアントに対して、新規事業立案・実行支援、マーケティング戦略、マネジメント体制構築など成長を主とするテーマに関わっている。

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