日テレ同時配信開始で聞こえる電波返上の足音 Z世代テレビ離れに放送の制度改正待ったなし

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図表は日本のテレビ局系と世界の有料動画配信サービスの会員数を比較したものだ。(外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

Netflixの会員数はアメリカでは全世帯数の半数近く、英国では4割以上を占めている。日本でもつい先日、8月末時点で500万人を突破し、約1年前から200万人増えたと発表している。これは日本テレビのHulu、フジテレビのFODよりはるかに多い。

またAmazonプライムビデオは日本でも頭抜けた会員数を獲得している。グラフには含めていないが、ほかにもスポーツ動画配信サービスのDAZNの会員数は200万人とも300万人ともいわれている。

会員数の差だけではない。日本のテレビ局にとってもう1つ怖いのは、NetflixやAmazonの桁違いの資金力だ。例えばドラマ1話の制作費は日本の数十倍ともいわれ、DAZNがJリーグの放映権を10年で2100億円という破格の金額で獲得したことは知られている。

日本のアニメへの投資にも積極的で、NetflixとAmazon両社ともテレビ作品の配信権を高額で買い占め、オリジナル作品を次々と制作。このままでは圧倒的な資金力を持つ黒船に、ユーザーやコンテンツだけでなく番組を作る制作者も奪われてしまいそうだ。

テレビ離れ対策に同時配信は有効か

こうして日本のテレビ局が、日本語と無料の壁に守られていると思い込みノロノロしていた間に、視聴者であるユーザーはテレビ局を見限ってしまいつつある。以下のグラフはNHK放送文化研究所が5年ごとに調査しているテレビの行為者率の1995年から2015年までの経年変化だ。

行為者率とは1日に15分以上テレビを見た人の割合になる。これを見るとテレビがどんどん見られなくなっているのがわかるが、男性は2010年から2015年にかけて減少幅は大きく拡大し、テレビ離れが加速している。

とくにZ世代と言われる幼いときからネット環境の中で育った世代のテレビ離れは顕著だ。2015年これほどまで落ち込んだものが5年が経った2020年、どのようになっているか。今年の調査結果が気になるところだ。

こういったテレビ離れした人たちに番組を見てもらうためには、その人たちが見ている場所、つまりインターネットに番組を出していくしかない。日本テレビだけでなく全局が全番組を同時配信、さらに見逃し配信をすれば時代遅れだったテレビは一気に復活すると私は考えている。ところが、それがなかなか難しい。最大の障害は権利処理の問題だ。

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