ソニーは構造改革進み今期赤字が想定以下、来期も黒字化濃厚、残るは成長戦略の実現に

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ソニーは構造改革進み今期赤字が想定以下、来期も黒字化濃厚、残るは成長戦略の実現に

ソニーの今2010年3月期は、会社側の従来計画よりも営業赤字幅が縮小する見通しだ。エレクトロニクス(エレキ)部門で構造改革が計画以上に進捗しているなどが要因。関連費用を除けば営業黒字の水準で、来11年3月期の黒字体質定着がほぼ確実となってきた。経営課題はすでに、3D製品群や電子書籍など成長事業の育成に移っている。

会社の修正見通しによると、今期売上高は7兆3000億円(前期比5.6%減)と従来計画どおりだが、営業赤字が従来計画比300億円改善し300億円(前期は2277億円の赤字)となる。

テレビ、コンパクトデジタルカメラなどで拠点再編や人員削減、部材調達比の圧縮など採算の改善が進んでいる。特にテレビの改善は顕著だ。製品価格の下落の影響で09年3~12月の9カ月間の事業売上高が3420億円と前年同期比で8%減ったにもかかわらず、営業利益は70億円と黒字化する見通し。前期比では480億円の収支改善となる。

ソニーの決算は米国会計基準を採用しているため、営業費用には人員リストラなどに関連して発生する構造改革費用も含まれている。この費用を差し引いた「実力値」では、今期通期で1400億円程度の営業利益がを稼ぎ出せる力がついてきていることになる。

また、サプライヤー2500社を半減する部材調達の見直しは、選別した取引先に対して価格交渉を継続するため、来11年3月期にも費用節減効果が漸進する見込みだ。「東洋経済オンライン」は来期は名目ベースでも営業黒字化が実現するとみて、表記のように予想している。

収益構造の再編・テコ入れにほぼメドがついたことで、ソニーにとって残る課題は成長戦略を本格的に推進することだろう。テレビ、放送設備などの3D映像機器では、今夏に家庭用テレビを全世界で発売するといった計画があるが、競合のパナソニックや韓国サムスン電子も同様の製品を発売するため、差別化が問われている。

ソニーは自社の優位性が、テレビからゲーム、携帯電話まで幅広い端末を揃えている点にあるとしている。ただこの強みを最大限に生かすには、1つのコンテンツを複数の端末間で自在に移動して楽しめるといった、端末間の連携が不可欠だ。そこで注目されるのが、10年内にも始動する音楽・映像等ソフトの配信・管理プラットフォーム「ソニーオンラインサービス(SOLS)」だ。

SOLSは米アップルのiTunesと類似した機能を持つと目されており、ユーザーをソニー製品群に囲い込めるほか、コンテンツ販売における流通プラットフォームとして収益化することも視野にあるようだ。

特に、新分野である電子書籍「リーダー」事業では、端末そのものにはソニー独自の要素が乏しいため、このプラットフォームでユーザーを囲い込む必要があるだろう。ちなみにソニーはリーダーの世界販売について10年度に100万台、その後3年程度で年間300万台程度まで育成できると見込んでいるようだ。

参入を検討している自動車電池については、現時点では大きな進捗はないもよう。ソニーの大根田伸行CFOは、09年4~12月期決算発表の会見で、「複数の自動車メーカーと話をしているのは事実だが、近々大きな投資が発生する段階ではない」と話すにとどまった。
(杉本 りうこ)



《東洋経済・最新業績予想》
(百万円)    売 上  営業利益 経常利益  当期利益
◎本2009.03  7,729,993 -227,783 -174,955 -98,938
◎本2010.03予 7,300,000 -30,000 -40,000 -70,000
◎本2011.03予 8,000,000 175,000 145,000 120,000
◎中2009.09  3,261,063 -58,292 -49,970 -63,401
◎中2010.09予 3,600,000 54,000 39,000 32,000
-----------------------------------------------------------
         1株益¥ 1株配¥
◎本2009.03  -98.6 42.5特
◎本2010.03予 -69.8 25 
◎本2011.03予 119.6 25-30 
◎中2009.09  -63.2 12.5 
◎中2010.09予 31.9 12.5-15 

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