技術進歩の最善の努力は悲惨な結果を起こしうる--『新版 日本経済の事件簿』を書いた武田晴人氏(東京大学大学院経済学研究科教授)に聞く

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--高度成長にも政策の役目が重要だったと。

特に産業政策。政府と企業との関係に微妙な部分があって、その最後の大きな出来事が新日本製鉄の成立のところでのもめごとだった。それまで日本は温室の中の恵まれた高度成長。それが大国となって温室から抜け出すときにも、まだ弱く、外国とまともに競争したら負けると思っている。この後進国意識を持ちながら、70年代という時期までくる。そういう意識がニクソン・ショック、オイル・ショックでの過大な財政出動につながってしまう。

--「不良債権と金融危機」が最終章です。

いろいろ議論がされているが、結局、長期不況の最大の問題は不良債権処理の遅れだ。歴史に学び、早い時期に処理し、金融的な安定性を早期に取り戻すことが第一の処方箋だったはず。にもかかわらず財政出動の拡大によって、景気回復をしようとする古い処方箋を使った。そして、全体として不安な将来を作ってしまう。

(聞き手:塚田紀史 =週刊東洋経済)

たけだ・はるひと
1949年生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。同大学社会科学研究所助手、同大学経済学部助教授を経る。専攻は日本経済史。著書に『日本の政策金融』(東京大学出版会)、『高度成長』(岩波新書)、『仕事と日本人』(ちくま新書)、『日本人の経済観念』(岩波現代文庫)など。

『新版 日本経済の事件簿』 日本経済評論社 3150円

  

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