年収850万円超の人が節税に使える「親孝行」 大増税時代、非同居の親を助けて自分も負担減

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Aさんの所得税がどう変わるのか、2017年の税額から追ってみます。

2017年のAさんの給与所得控除は220万円、給与所得は1030万円でした。そこから社会保険料控除(厚生年金保険料・健康保険料・雇用保険料)の約143万円、配偶者控除38万円、20歳だった子どもの特定扶養親族の扶養控除63万円、本人の基礎控除38万円が差し引かれて、課税所得が求められます(生命保険料など、ほかの控除は計上せず)。その結果、約748万円(所得税率23%)の課税所得に対して、所得税は約108万円でした。

2018年になると配偶者控除の法改正があり、年収1220万円を超えていたAさんは配偶者控除がなくなりました。そのため2017年に比べて課税所得が約786万円に増え、所得税も約117万円と約9万円増えました。

そして、今回の改正で給与所得控除が195万円に下がることになります。給与所得は1055万円に増えます。社会保険料控除(厚生年金保険料・健康保険料・雇用保険料)約144万円、本人の基礎控除は改正で10万円増えて48万円、23歳になった子どもの扶養控除はなくなります。その結果、課税所得は約863万円(所得税率23%)となり、所得税は約135万円と2018年からは約18万円の増税となります。

2017年から2度にわたる改正で、Aさんは、累計27万円も税金が増えることがわかりました。ようやく教育費の負担から解放されたと思っていたのに増税となり、ガックリした様子でした。

「年収860万円」の独身サラリーマンも増税に

先日、オンライン相談でお会いしたBさん、57歳で独身の会社員です。こちらも増税の話題になり、Aさんのケースと同じように試算をすることになりました。Bさんの年収も今回の増税ラインを超える860万円です。その所得税がどう変わるのか、同じく2017年の税額から追ってみました。

Bさんの2017年の給与所得控除は206万円、860万円からマイナスした給与所得は654万円でした。そこから社会保険料控除約119万円、本人の基礎控除38万円を引くと、課税所得は497万円(所得税率20%)、所得税は約57万円となりました。

Bさんは独身ですから、2018年の法改正の影響はありませんが、今回の改正でどうなるでしょうか。給与所得控除が195万円に下がることから、2017年より11万円控除額は少なくなります。ただし、基礎控除は38万円から48万円へと10万円増えるので、差し引きで課税所得が1万円増えることになります。Bさんの所得税率は20%なので、増税のインパクトは2000円(1万円×20%)ほどです。

AさんもBさんも、給料は上がらないのに増税で手取りが減るというのは、決して気持ちよいものではありません。ただ、2人には共通点があり、それを理由に増税の対象外になる可能性があります。

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