菅首相誕生で政権とメディアの関係はどうなる 日本のジャーナリズムに及ぶ影響とは

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自民党総裁選に立候補した菅義偉官房長官の消費増税をめぐる発言が話題になっている。写真は9月9日、都内の自民党本部で討論会に臨む菅氏(写真:ロイター)
自民党総裁選に立候補した菅義偉官房長官の消費増税をめぐる発言が話題になっている。9月10日に出演した民放のテレビ番組では「将来的なことを考えたら行政改革を徹底して行ったうえで、(消費税率を)引き上げざるをえない」と発言。その翌日の会見では「あくまでも将来的な話であり、今後10年くらいは引き上げる必要がない」とあたかも発言を撤回したかのような印象を与えた。
今月、田原総一朗氏との共著『嫌われるジャーナリスト』を上梓した、官邸長官会見でのやりとりで「菅官房長官の天敵」といわれた東京新聞記者の望月衣塑子氏が語るジャーナリズムの危機とは?

メディアへの対応を尋ねた質問に対して…

「安倍政権では説明責任のあり方が常に問われてきた。総理になった場合の記者会見はどう行うか。総理会見を週1回に定例化したり、ぶら下がり(取材)を行ったりするなど、総理としての説明責任どう果たすのか。安倍政権の国会対応では、野党の求める出席に必ずしも対応していなかった。国会出席への要求にどう対応するのか」

9月8日の総裁選共同記者会見で朝日新聞記者が質問した。菅氏はこう答えた。

「世界と比べて圧倒的に日本の総理は、国会に出席する時間が多いが、大事な所で限定して行われるべきだ。行政の責任者としての責任を果たせない」「G7の中で閣僚が記者会見しているのは1カ国、週1回30分くらい。日本は官房長官が朝夕、2回会見、責任をもって説明している」

メディアへの対応を尋ねた質問だったが、菅氏はほぼゼロ回答だった。コロナ禍を理由に1日10分前後で終えている現在の官房長官会見すら「十分すぎる」という。総理の日々のぶら下がり含めて必要ないだろう、と言いたいかのような回答に、失望した記者も多かったことだろう。石破氏の「大臣の時、手が下がるまで質問を受けていた。できるだけ多くのメディアの質問に答えたい」、岸田氏の「できるだけ多くの質問に答える姿勢を示す必要ある」と前向きな回答をしたのとは対照的だった。

私は9日6日の討論会で3候補者の論戦を見るつもりだったが、台風対応のため菅氏の参加は中止になった。ここで思い出したのが、15府県で224人もの死者を出した2018年7月の西日本豪雨のさなか、東京・赤坂の議員宿舎で開かれた自民党議員の宴会「赤坂自民亭」だ。岸田氏や安倍首相が宴会に出席。また、日本テレビの「news every.」は、豪雨災害が続く6日夜、菅氏が手配した車に乗った無派閥議員らが次々と官邸入りし、安倍首相と総裁選に向けて会合をしていたことをスクープした。菅氏の行動は危機管理担当大臣として適切だったのか。私は、官房長官会見で菅氏に質問した。

「長官は先手先手で(豪雨災害に)臨むと言っていますが、災害対策本部ができていない状況で、なぜこのような会合したのか、どういう議員を何分くらい呼んで、どんな会合だったのか」「危機管理担当大臣の官房長官として6日夜の行動は問題だったのでは」

菅氏は嫌そうな表情で突き放すように答えた。「そうしたことにお答えする必要はない。ただ、防災対策はしっかりやっていました。このことは明言をいたしております」「(問題かどうか)お答えする必要はない」

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