「日産に巨額税金投じる」政府の怪しすぎる挙動 なぜ一企業に1300億円もの政府保証するのか?

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また、経営姿勢も問われます。以前の日航は、組合が強かったこともあって、破綻前に大規模なリストラは行われませんでした。

対する日産は、1999年にカルロス・ゴーンがトップに就任した後、リバイバルプランで国内工場の閉鎖や系列破壊などリストラを断行しました。企業としては復活しましたが、多くの国内雇用が失われました。これまで雇用維持にも税収増にも貢献してこなかった日産に、「もっと雇用が減ったら困るから」という理由で税金を投入するのは、合理的ではありません。

経営姿勢ではもう一点、カルロス・ゴーン元CEOの逮捕・国外逃亡や日本側の経営陣の姿勢に厳しい視線が注がれています。周知の通りカルロス・ゴーンは、日産を食い物にして蓄財に励み、揚げ句の果てには日本の司法の手を逃れてレバノンに逃亡しました。

こうしてみると、同じように政府保証を受けたといっても、国民の「まあ致し方ないかな」という納得感は、日航と日産では雲泥の差があるのです。

「日産の債務保証」を政府が引き受ける理由

今回、政府が日産の債務保証を引き受けたのは、コロナショックに直面し、日産の倒産、部品メーカーなどの連鎖倒産、それらによる大量の失業発生、という危機的な事態を懸念してのことでしょう。日本政策投資銀行が融資に応じないと日産の資金繰りが厳しくなる恐れがあり、日本政策投資銀行の判断で融資を決めたようです。

菅政権とすれば、資金援助で日産が立ち直り、融資が無事に返済され、数年後に「何事もありませんでした」という結末を迎えたいところ。

しかし、日産は本当に立ち直るのでしょうか。日産は、コロナの影響が2月、3月の実質2カ月しかなかった2020年3月期決算で大赤字を計上している通り、近年、そもそも危機的な経営状態に陥っています。

自動車業界はいまCASE(Connected(コネクテッド)・Autonomous(自動運転)・Shared & Services(シェアリングとサービス)・Electric(電動化))という100年に一度の大変革期を迎えています。

CASEの流れに乗った米テスラが大躍進し、この8月に株式時価総額でトヨタを上回りました。一方、流れに乗り遅れた自動車メーカーは、淘汰されつつあります。現在販売台数世界一のトヨタですら、安泰ではないと言われます。

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