(第2回)日本が歩むべきは高度な知識産業への道

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 この20年間に日本でどんな新しい企業が現れたかといえば、残念ながら思いつかない。楽天やユニクロを除けば、泡沫企業が現れただけであり、それらはいつの間にか消えていった。東証マザーズ、ジャスダックなどの日本の新興市場は、壊滅的な状態だ。

アメリカの先端IT企業は、時代の変化に柔軟に対応している。というより、むしろ時代の変化を作り出しているのである。このような企業は、残念ながら日本には存在しない。現在の日本の主要企業は、20年前にも日本の主要企業だった。そして、基本的にはそのときと同じビジネスモデルを継続している。

また、アメリカの先端IT企業が行っているビジネスは、他社が真似できないものだ。グーグルのビジネスモデルは、検索サービスを提供し、それに連動した広告で収益を上げるというものだが、グーグルの検索と同じように優秀なものを他企業は提供できない。アマゾンもアップルもIBMも、他企業が容易に追いつけないビジネスを行っている。

これは自然独占ではなく、規制による独占でもなく、優れた技術によるものだ。だから高収益は当然である。前回述べた投資銀行も、容易に真似られないビジネスを展開しているという点では、まったく同じだ。

誰もができることを行えば、価格競争に巻き込まれて収益は低下する。ほとんどの日本企業は、このために低収益に陥っている。

世界経済危機とは選別過程だった

1年ほど前、世界金融・経済危機が進行するのを見て、多くの人は、「アメリカが駄目になった」と考えた。「資本主義が自滅した」と言った人もいた。しかし、こうした見方は誤りだったことが、いまや明白になった。

経済危機は、実は選別過程だったのだ。危機を潜り抜けた産業・企業と駄目になった企業が、はっきりと分かれた。しかも「勝ち組」と「負け組」は、偶然ではなく、明確な理由で決まった。

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