ウーバーvs.出前館、「デリバリー」業界の死闘 需要急増でも薄い儲けに、早くも買収観測が

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出前館はコロナショック以前から時短ニーズを取り込み、2018年8月期まで増収増益を続けてきた。だが、競争が激化する中で、前2019年8月期はシステム増強や広告宣伝などの先行投資がかさんだ。

事実、前期の売上高は前々期比22.7%増の66億円だったものの、営業損益は3900万円の赤字に転落。今2020年8月期も積極投資を継続しており、第3四半期(2019年9月1日~2020年5月31日)累計で16億円の営業赤字だ。同社は、本稿執筆時点で通期の業績予想を発表していないが、黒字化は難しいだろう。

Uber Eatsも利益は「めちゃめちゃ薄い」

同様にライバルのUber Eatsも、利益面では苦戦している。Uber Eats日本代表の武藤友木子氏は東洋経済プラス(8月4日公開)のインタビューで、「(利益は)めちゃめちゃ薄い。高くない価格帯のカジュアルなランチであれば、もらったマージン(手数料)から配達している方々に満足に働いてもらえるくらいの報酬を出すと、利益は限られる」と語っていた。

武藤氏は「だからこそ規模が必要だ」とも語る。5月時点の出前館とUber Eatsの掲載店舗数は、それぞれ2.4万店と2.5万店。店舗を増やし、利便性を高めて多くのユーザーを囲い込む。規模のメリットを働かせない限り、デリバリービジネスで安定的に利益を出すことは難しい。

それでもデリバリー業界では、今後の市場拡大を期待し、新規参入が相次いでいる。

ECなどIT大手の楽天は「楽天デリバリー」で1万店以上を展開している。スマホゲームのレアゾン・ホールディングスのグループ会社menuは2018年設立だが、社名と同名のサービスは、今年6月時点で掲載店舗数が2.4万店。すでに出前館と同規模だ。

スマホゲーム大手のDeNA系などから出資を受けるベンチャー企業のシンが運営するのがChompy。規模はまだ小さいものの、チェーンではない有力飲食店を多く掲載し、注目を集めている。LINE自身も「LINEデリマ」を展開しているが、「出前館」ブランドに一本化する予定だという。

群雄割拠のデリバリー業界。各社はキャンペーンやサブスクサービスを矢継ぎ早に投入し、しのぎを削る。当面は採算よりも先行投資優先で、規模のメリットを目指した熾烈な拡大競争がしばらく続きそうだ。

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