マニラ、ダカール、なぜ途上国で働くのか? 「グローバル人材」たちの苦労と葛藤(2)

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日本で就職しておけばよかった……

しかも授業はほとんどがディスカッションやプレゼンテーションから成るものだった。アメリカ人たちが大声・早口でああだこうだと言い合っている中で自分の意見を言うことができず、ただ黙って座っているしかなかった。ディスカッションにまったく貢献できないことがつらく、自分の存在価値がわからなくなったという。どうしてこんなつらい道に進んだのか、日本で就職しておけばよかった、と思うことも度々だった。

彼女のBUでの指導教員はカレンという老淑女だった。彼女はある日、カレンに相談に行って、こう打ち明けた。自分はまったくディスカッションに貢献できず、このプログラムにいる意味を見いだせない。だから一度BUを休学し、語学学校に通って英語力をつけてから戻ってこようと思う、と。

するとカレンは、“be patient” (辛抱しなさい)とアドバイスをくれたという。そしてカレンは彼女が担当する授業で、櫻井さんからそのような相談があったことは一切触れることなく、クラスメイトたちにこう促したという。

「あなたがたが将来、働くことになるであろう国際機関には、英語が不得手な外国人も多くいます。だから、相手にちゃんと伝わるように議論をする練習をしてください」

ボストン大学卒業式の日に

それを聞いて櫻井さんは感動し、頑張ろう、と思ったという。結局、彼女は休学することなく2年間のプログラムを終え、学位を取った。

2年目になると慣れてきて、ディスカッションもアメリカ人と対等にできるようになったし、わからないときにはわからないと言う度胸もついた。

そして何よりも、その間に「自分はやはり国際教育開発で一生生きていきたい」と強く思うようになったそうだ。

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