ビジネスで多発「和製英語」誰にも通じない問題 「アジャイルにデシジョンして」と言われても

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つまり、あまりにもカタカナ語を乱用すると、日本人にも外国人にも伝わっていない可能性があります。それなのに「俺って仕事できる感じ!」と思っているとしたら、それはちょっと残念ですね。

ご存じのとおり日本語の基本は50音です。アイウエオの5つの母音にカ~ワ行の子音の組み合わせ、これに濁音や拗音などが加わったもので基本的にあらゆる音を表現し、認知しています。

しかし、英語の「TH」のように単純にカタカナに置き換えられない発音も外国語にはあります。それに加え単語として連なったときにカタカナ表記とはまったく違う音になるので、カタカナを読んでも元の英単語を思い浮かべるのに少し時間がかかるのです。

最近全然聞き取れなかったのが「ソーシャルディスタンス」です。カタカナは無論読めますが「ソー・シャ・ル・ディ・ス・タン・ス」と聞いてもしばらく考えないとSocial Distanceのこととはわかりませんでした。

カタカナ語は「隠語」に似ている?

実は逆もまったく同じで、私の英語的な発音を日本語の中に交えると非常に聞きにくいときがあることも認めなければなりません。先日あるビジネスメディアのFacebookの動画で学校教育についてコメント(日本語)したのですが、テロップで「リモートカスーン」と書かれていました。はて何と言ったかな、と思って聞き直したらそこは「Remote classroom」と言っていました(実際公開された動画では正しく書かれています)。

こういうことがあるので、私の場合よほど日本語で何というかわからないとき以外は極力カタカナ語を使わないようにしています。

こんなわかりにくいカタカナ語ですが、私は「隠語」にちょっと似たものを感じます。お寿司屋さんがお茶のことを「あがり」と呼んだり、TV局の人が、撮影終了時間が決まっていることを「ケツカッチン」と言ったりするアレですね。

これら隠語は「特定の社会・集団内でだけ通用する特殊な語」(出典:小学館デジタル大辞泉)ということで、部外者にはわかりにくいこと、伝わらないことが目的で、そうすることでその集団の帰属意識が確認できるのでしょう。

カタカナ語を多用する人も意識はしていないのかと思いますが、「理解できるこちらサイドの人と、それ以外の人」のような境界線を作ってしまわないか、というのは心配しすぎでしょうか。言葉は、やはり伝わることがいちばんだと思います。

デビット・ベネット テンストレント最高顧客責任者

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David Bennett

1979年にジャマイカで生まれ、カナダ国籍を持つ。カナダトロント大学大学院卒。早稲田大学にて日本語を習得、学習院女子大学大学院にて日本古典文学を学ぶ。東京でコンサルタントとして社会人キャリアをスタート。AMD社コーポレートバイスプレジデント、および同社のレノボアカウントチームのゼネラルマネージャーを務め、コンシューマー、コマーシャル、グラフィックス、エンタープライズプラットフォームなど広範な事業を手掛ける。2018年5月レノボ・ジャパン社長に就任、2022年6月から現職。古典文学が好き。

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