落語界に学ぶ、一人前になるための修行法

【キャリア相談 特別編】第2回

 何かにつけ不確実性の高い現代。一生安泰の仕事も、未来永劫つぶれない企業も存在しない。自分の仕事に明日があるのか――それをつねに考えておかないといけない時代だ。 この連載では、悩めるビジネスパーソンからのキャリア相談を募集。外資系金融、コンサル、ライブドア、企業再生コンサルなどを渡り歩き、数多くの業界やスタートアップに精通する塩野誠・経営共創基盤(IGPI)パートナーに、実践的なアドバイスをしてもらう。
 今回は特別版として、イェール大学卒業後、三井物産勤務を経て、現在、落語家として活躍する立川志の春氏とのキャリア対談をお届けする。
※前編「イェール大卒、元商社マン落語家のキャリア論」はこちら

親から反対された弟子のほうが辞めない

塩野:引き続き、修業時代のお話を。風呂なしのアパートで、無給の生活がつらいとは思わなかったのですか。

志の春:それは思いませんでしたね。すぐ慣れました。

塩野:楽屋でのお仕事はどうですか。お茶出しとか、着物を着るお手伝いとか。

志の春:そっちはなかなか苦労しました。もともと僕はゴーイング・マイ・ウェイのアメリカで長く暮らしていましたから、誰かに対して何かお世話をするという経験があまりないわけです。それが師匠のところに入門してまず言われたのが、「俺を快適にしろ」という一言。「俺を快適にできないやつが、お客さんを快適にできるか」。

塩野:そのとおりですね。これちょっと会社で言いたいですね。

志の春:そうですよね。会社だとパワハラかセクハラみたいですけど、徒弟制度は絶対的な関係なので。「こうしろ」と言われたことをするのじゃなくて、とにかく師匠をずっと見ていて、次に何をやりたいか察して、先回りして気を利かすということが大事。前座のいちばんの仕事は落語なんかじゃなくて、気を利かすことなのです。でも僕はそんなことをやってこなかったから、「ここまでやっていいんだろうか、こんなのは人のプライバシーに入り込みすぎじゃないか、お節介じゃないか」と、僕の中にリミッターがあるわけです。

塩野:そうか、塩梅がわからない。

志の春:ええ。でもほんとは前座なんてお節介なほうがいいわけですよ。もう気にしてますよ、気にしてますよって、やりすぎなくらいがいいのだけど、僕なんかわりと落ち着いているように見えて、もうしょっちゅう「何ぼーっとしているんだ」としかられた。

塩野:普通の日本人よりハンデがあった感じですね。

志の春:ええ、思いっきりありました。「お前みたいな気遣いのできない人間に、落語なんかできるわけがない。やめちまえ」と何度言われたことか。

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