金価格は「第3のエンジン」点火で再度急騰する いったん落ち着いても、いずれ上昇の可能性

拡大
縮小

一方、安全資産としての需要の高まりは、FRBの金融緩和によって構築された上昇相場のペースを速める「ブースターのような効果」があったと考えられる。新型コロナウイルスは、中国からアジア各国、欧州、米国と感染が拡大する節目、節目で人々の不安を煽り、さらには感染国が厳格なロックダウンを行い世界経済がマヒ状態に陥った時点で、懸念拡大のピークを迎える格好となった。

その後いったんは感染の拡大も一服、人々の不安も後退したものの、ここへきて再び感染拡大の兆しが見えるなか、ことあるごとに安全資産としての需要を呼び込む格好となった。

さらに、現在はアメリカが中国領事館の閉鎖を命令して以降、米中関係は悪化の一途を辿っており、これが新たな不安と安全資産としての需要を呼び込む可能性が極めて高そうだ。

ドナルド・トランプ大統領はそれまでどちらかというと中国への攻撃は口先だけにとどめ、実際にはそれほど厳しい政策を打ち出すことはなかった。だが、領事館の閉鎖命令以降、方針を変更したのは間違いなさそうだ。

マイク・ポンペオ国務長官やピーター・ナヴァロ通商担当大統領補佐官といった「対中強硬派」の意見を重用するになったのは、秋の大統領選を有利に戦うために重要との判断に基づいてのことと思われる。今後も中国に対しては厳しい姿勢を取り続ける可能性が高く、事あるごとに市場の不安を高めるような政策を打ち出してくるのではないか。

インフレヘッジ需要という、さらなる押し上げ要因も

また年初の時点では、アメリカがイランの司令官を殺害したことによって、中東情勢が緊迫するとの見方が市場の大きな懸念材料となっていたことも忘れてはいけない。

その後の新型コロナウイルスの感染拡大で、テロ活動すらも下火になってしまった感はある。だが、両国の関係が改善したわけでは決してない。また石油収入の激減によって、サウジアラビアをはじめとした産油国の政情も依然として不安定なままだ。今後も世界経済、国際情勢共に先行き不透明感が極めて強い状況は継続、何かの事件をきっかけに安全資産としての需要が金相場を大きく押し上げるというパターンは、何度となく見られそうだ。

そしてもう1つ、この先大きく相場を押し上げる「第3のエンジン」となりえる材料があることも忘れるべきではない。それは、FRBの積極的な金融緩和や政府の財政支出、新型コロナウイルスの感染拡大によるコスト上昇に伴う、インフレ圧力の高まりだ。

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