自動車業界は、10年の世界主要市場での販売見通しは依然厳しく、回復は緩やか《スタンダード&プアーズの業界展望》

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<表1>世界主要市場の自動車販売予測
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日本の自動車メーカー、業績は改善基調へ

09年3月期に大幅な減益や営業赤字への転落を経験した国内自動車メーカーの業績は、09年4~9月期で底打ちし、回復基調に入ったとスタンダード&プアーズはみている。

主要各社は2010年3月期の業績見通しを数回にわたって上方修正しており、ホンダ(A+/安定的/A−1)は前期並みの営業利益1700億円、日産自動車(BBB/安定的/A−2)も当初の赤字予想から、現在では1200億円の営業黒字を見込んでいる。最大手のトヨタ自動車(AA/ネガティブ/A−1+)は3500億円の営業赤字を予想しているが、予想赤字幅は縮小している。

為替の動向は引き続き不透明要因だが、主要各国で補助金や減税等の施策が一定程度新車販売を下支えしており、各社の固定費やコストの削減が比較的順調に進捗していることを踏まえると、大幅な為替変動がなければ、10年3月期業績は、各社の現時点の見通しより良好なものとなる可能性もあるとスタンダード&プアーズは見ている。

収益の回復傾向と設備投資の大幅な絞り込みに加え、各社とも09年4~9月期までに、ほぼ在庫の適正化等を行って運転資本の負担を減らし、キャッシュフローを大きく改善してきていることから、財務基盤が再び悪化する可能性は低いと考えている。

とはいえ、自動車販売の見通しは厳しいため、スタンダード&プアーズは、11年3月期も各社の収益・キャッシュフローは圧迫されるとみている。

08年から09年にかけて業界全体で格下げやアウトルックの下方修正が相次いだ後も、国内の上位各社は、燃費に優れる小型車やハイブリッド車の品ぞろえや技術力で強みを維持していることや、地理的分散やコスト低減においても全般的に欧米の競合他社よりも進んでいることを背景に、世界的にも高い信用力を維持している。

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