アメリカにおけるインターネット選挙運動の歴史--解禁へ向け動き出したインターネット選挙運動[3]

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 ブッシュ候補の軍歴を疑問視する報道を行ったCBSテレビに対し、非を認め謝罪させることに至る例もあった。04年7月の民主党全国大会ではブロガーのために記者席が与えられ、そこからの情報発信もされた。これまでのように固定化された情報の発信者・受信者という役割分担が大きく変化したのである。

ネットで天下を奪ったオバマ

オバマはディーン陣営のスタッフをメディア・ディレクターとして採用し、そのノウハウをさらに進化させて活用した。

SNSであるFacebookやMyspaceに自身のプロフィールを掲載、SNS上で「フレンド」「サポーター」という自発的支援者を獲得、その支援者たちを組織化し、ボランティア選挙運動員兼小口の個人献金提供者となっていった。現段階で最も高度な選挙戦術と考えられる「空中戦と地上戦の融合」である。

まず、1300万件ものメールアドレスを集めた(04年のブッシュは600万件、ケリー300万件、ディーン60万件)。副大統領候補が誰になるのかをメディアより先にメールに流すと約束するなど、有権者がメールアドレスを登録したくなるような方法を実行した。

また、献金額ごとにターゲットし、7000を超える種類のメッセージを送ったという。受信したメールは10億通を超えた。

次に、ネガティブキャンペーンへの対処も万全であった。FightTheSmears.comという特設サイトを準備し、事実関係の確認できない誹謗中傷に対して、オバマ支援者が反論する運動を展開した。

そして、ネット献金をフル活用し個人献金を大量に集めた。送られた電子メールをクリックして少々の事項を入力するだけで献金できる仕組みを用意し、これまで政治に興味を持ったことのない若者からの小口献金を集めた。

さらに「マッチング」と呼ばれる手法を導入した。「明日50ドル献金してくださる方がいます。もしあなたが同じ50ドルを献金してくれれば、献金額は2倍になるのです。つまり、あなたの50ドルは100ドルになるのです」という電子メールを大量に送るのだ。

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