ノーベル経済学賞候補が、いま考えていること  世界的第一人者ブランシャールのマクロ経済学

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マクロ経済学の世界的専門家として知られるオリヴィエ・ブランシャール。専門家の間で、例年ノーベル賞候補として名前もよく上がる彼の人となりを紹介します(写真:ロイター/アフロ)
オリヴィエ・ブランシャールは、マクロ経済学の世界的専門家として知られる。
MIT(マサチューセッツ工科大学)で教職を務め、IMF(国際通貨基金)のエコノミストに就任し、最近ではAEA(アメリカ経済学会)の会長も務めていた(2018年)。FRB(米連邦準備銀行)のアドバイザーも長年務めている。
専門家の間では例年ノーベル賞候補として名前もよく上がる、マクロ経済学において誰しもが認める世界的第一人者である。
その氏の主著が、マクロ経済学の「教科書」なのだが、2015年に大幅改訂され、その邦訳が今春に刊行された(邦題『ブランシャール マクロ経済学 第2版』)。この改訂は、単なるバージョンアップ以上に、彼にとって非常に大きな意味を持っている。彼の人となりをもよく表す、その理由を簡潔に紹介していきたい。

知的職人気質のフランス人

ブランシャールは神経科医の父と精神科医の母を両親に持つフランス人だ。幼少時は賢いものの、勉強が必ずしも好きではない子どもだったという。

『ブランシャール マクロ経済学 第2版 上・下』書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

パリ・ナンテール大学に進学したが、1968年に学生暴動が起きて大学が閉鎖され、パリの街中で激しい戦いが繰り広げられる。知的な刺激と同時に、そのイデオロギー的な争いに次第に嫌気がさしてきたブランシャールは、長い入院の際に経済学の本を読みあさり、経済学が世界をよりよく変える可能性を深く考えるようになる(Steven Pearlstein, “The smartest economist you’ve never heard of,” The Washington Post、October 3, 2015を参照)。

しかし、彼の目には、フランスの大学の経済学カリキュラムは抽象的すぎるうえに、イデオロギー的すぎるとも映っていた。修士論文を書き終えて、ブランシャールはアメリカに留学することにする。

ブランシャールはマサチューセッツ工科大学(MIT)に留学することが決まった。MITの経済学部は1960~70年代にポール・サミュエルソンを擁し、米国一の地位にのし上がった、最も勢いのある「アメリカ経済学の中心地」だった。

次ページMITはブランシャールにとって“水が合う”環境だった
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