「面白半分」では済まない鉄道妨害の大きな代償 単なる「いたずら」のつもりでも重大事案に発展

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先日、常総市役所を爆破するという予告があり、結果として関東鉄道常総線も2時間弱止まることとなった。

鉄道に対する爆破予告ではないが、従業員約4400人を抱える自動車製造会社に爆破予告の電話をかけた事件では、威力業務妨害罪として懲役2年、執行猶予4年の刑が言い渡されている(福岡地方裁判所行橋支部2019年5月22日判決)。執行猶予期間は1年以上5年以下の期間で定めることができ(刑法第25条第1項)、猶予期間が長いほど罪としては重くなる。そのため4年というのは執行猶予の事案でも比較的重い罪とされる。

今回の常総市役所の爆破を予告した者がどのような刑を科せられるかわからないが、そうそう軽い刑で済むとは思えない。面白半分の爆破予告だけでも重罪だが、実際に爆発物を仕掛けたり爆発させたりしたら、威力業務妨害罪だけで済む話にならないのはもちろんである。

代償は刑罰だけでない

これらの犯罪で負わされる責任は刑罰だけではない。民事上の責任も負う危険がある。列車を妨害して停止させるなどすれば当然ながら相応の賠償責任が問われる。賠償責任を負うのは行為者本人であるが、小学生など未成年者が行為者であると、親が子どもの行動を止める義務を怠ったとして損害賠償請求されることもある。

国土交通省鉄道局が2010年3月に発行した「鉄道利用者等の理解促進による安全性向上に関する調査報告書」によれば、線路上に鉄柵、木材、ホイル付きタイヤ等を放置し、列車運行を妨害した事例で460万円の賠償額が支払われた例があるようである。いたずら心で460万円。鉄道妨害の代償は決して安くない。

鉄道に対する妨害は「いたずら」ではない。犯罪である。その危険性や人に対する大迷惑は考えなくてもわかるはずである。「すみません、単なるいたずらでした」「そんな大事になるなんて思わなかった」「魔が差しました」「出来心です」などという言い訳や泣き言は通用しないし、させてはならない。これ以上裁判例が積み重なるのを誰も見たくはないはずだ。

小島 好己 翠光法律事務所弁護士

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こじま よしき / Yoshiki Kojima

1971年生まれ。1994年早稲田大学法学部卒業。2000年東京弁護士会登録。幼少のころから現在まで鉄道と広島カープに熱狂する毎日を送る。現在、弁護士の本業の傍ら、一般社団法人交通環境整備ネットワーク監事のほか、弁護士、検事、裁判官等で構成する法曹レールファンクラブの企画担当車掌を務める。

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