韓国が日本よりGDPの落ち込みが小さかった訳 「戦後最大の経済縮小」はどこまで深刻なのか

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では、新型コロナウイルスの感染拡大によって、日本経済はどの程度大きなショックに見舞われたのか。日本の4~6月期実質GDP成長率の前年比はマイナス9.9%である。

これはアメリカのマイナス9.5%とほぼ同様で、日米ともにコロナショックで約10%経済が縮小した。欧州を見ると、ドイツ=マイナス11.7%が米日に近い落ち込みだった一方で、フランス=マイナス19.0%、イギリス=マイナス21.7%、イタリア=マイナス17.3%といったように、20%近い大きな縮小となっている。

これらの欧州諸国は、コロナ感染の影響が大きかったので、強い経済活動制限を余儀なくされた。以上のように、米欧などの先進国の中では、日本の経済の落ち込みは、相対的にはマイルドだったと位置付けられる。

台湾、韓国は政府対応が成功、経済縮小は軽微

では、感染拡大が米欧より小さかったアジア諸国・地域との対比ではどうか。アジア諸国・地域の4~6月期GDPは、フィリピン=マイナス16.5%、マレーシア=マイナス17.1%、タイ=マイナス12.2%、シンガポール=マイナス13.2%、香港=マイナス9.0%などである。コロナウイルスによる死者が抑制された香港と、日本経済の縮小の程度はほぼ同じで、やはりアジア諸国の中で日本経済の落ち込みは大きくなかったと位置づけられる。

また、コロナの発生源とみられる中国は、1月後半早々に経済が封鎖されたため1~3月期GDPが前年比マイナス6.8%と大きく落ち込んだ。他のアジア諸国のように2桁の落ち込みではないが、最近の中国の平均成長率はプラス6%程度であり、この巡航速度と比べて、10%以上成長率を押し下げるショックが発生したと見られる。なお、中国は経済制限が和らいだため、4~6月期にはプラス3.2%まで戻っている。

一方、アジアの中で経済縮小が日本より小さかったのは、台湾=マイナス0.7%、韓国=マイナス2.9%である。台湾の経済成長率の底堅さが目立つが、コロナ抑制の政府対応がおそらく最もうまくいき、8月16日時点の10万人当たりの感染者20人、死者0.3人と主要国・地域の中では最も低く、そして経済活動制限も極めて限定的だった。

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