(第7回)フェルマーその頂上への遙かなる道~谷山豊に捧げるレクイエム~(その3)

●1955年、日光

1955年9月8日~13日に、東京および日光で彌永昌吉教授等が計画した代数的整数論に関する国際会議が開かれた。ヴェイユ、アルチン、シュバレー、ドイリンク、セール等外国人数学者10名が来日した。

そこで日本人数学者谷山豊はここでいくつかの問題を出した。以下にその問題を原文のまま掲げる。

問題12 C を代数体k 上で定義された楕円曲線とし、k 上C のL 函数をLc(s) とかく:

ζ c(s) = ζ k(s)ζ k(s-1)/L c(s)

はk 上C のzeta 函数である。もしHasse の予想[ζ c がC 上有理型で函数等式をみたす]がζ c(s) に対し正しいとすれば、L c によりMellin 逆変換で得られるFourier 級数は特別な形の.2 次元のautomorphic form でなければならない(cf. Hecke)。もしそうであれば、この形式はそのautomorphic fuction の体の楕円積分となることは非常に確からしい。
 さてC に対するHasse の予想の証明は上のような考察を逆にたどって、L c(s) が得られるような適当なautomorphiic form を見出すことによって可能であろうか。

問題13 問題12 に関連して、次のことが考えられる。“Stufe”N の楕円モジュラー函数体を特徴づけること、特にこの函数体のJacobi 多様体J をisogeny の意味で単純成分に分解すること。またN=q=素数、かつq≡3(mod4)ならば、J が虚数乗法をもつ楕円曲線をふくむことはよく知られているが、一般のN についてはどうであろうか。

読んでいただいた感想はいかがであろう。整数論を専門としない方にとっては何を言っているかすらわからないと思われる。当時これは会議に集まった世界の一流の数学者にとっても理解しがたい内容だったのだ。読者におかれてはこのストーリーをお読みいただくにあたり、この問題の内容の理解は不要である。これを簡単にいや短くいうとすれば、「すべての有理楕円曲線はモジュラーである」となる。谷山はまったく異なる二つの世界~楕円曲線のL函数と保型形式~の関連をはっきり問題にしたのであった。これは当時としては画期的なことで高く評価される。谷山の友人、志村五郎の手によってこの問題は研究、精密化された。

志村は1962~64年頃に、その予想をセール、ヴェイユ等に話した。ヴェイユはその論文の最後で、これに触れているが、当時ヴェイユは懐疑的であった。その後、志村の研究によりその予想の正しさが明らかになっていった。このような経緯からこの予想は「谷山・志村予想」といわれるようになった。
 いったい誰がこの予想がフェルマーにつながっていると予想しえたか。

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