安倍政権が「トランプ再選」を熱望している理由 政権与党は歴史的に共和党大統領を好んできた

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1990年代中頃に日米包括協議のもとでクリントン政権が日本と行った通商交渉や、1998年6月の9日間に及ぶ中国訪問の際にクリントン大統領が日本を「迂回」して中国に行ったことなどが、日本の指導者層にとっていまだにこだわりがあることがその理由のひとつとして挙げられる。実は、クリントン大統領は、在職期間の訪日回数は歴代のどの大統領よりも多く、5回訪れていたにもかかわらず、である。

第4の理由として、共和党が政権を取ったときの民主党の元政権幹部は基本的に大学やシンクタンクや法律事務所に戻っていくのに対し、民主党が政権を取ったときの共和党の元政権幹部の多くは経済界へと戻り、ビジネス活動を通じて日本との関係を維持する人が多いということが挙げられる。これによって日本人にとって重要な「人間関係」が継続され、元共和党政権幹部と日本の経済界の間に共通利益の共有が生み出されるのである。

民主党が掲げる多様性などに不安を感じる人も

第5の理由として、日本側は「共和党は根本的にビジネス出身者が多く、ビジネス契約などといった経済的報酬を重視する実利的傾向があり、対応しやすい」と考えているが、他方民主党は「アイデアや政策対話や知的なディベートにより関心があり、議論好き」であり、日本の指導者たちはこうした対話やディベートに参加をするのを好まない傾向がある。

第6の理由として、日本の指導者たちと共和党との間で長年培われた緊密な関係のために、日本のジャーナリストや学者の中には共和党支持者となった人たちがいて、彼らがマスメディアを通じて共和党の世界観を日本人に提唱していることが挙げられる。

第7の理由として、日本人の中には、共和党は「寛大で、伝統的な日本的人間関係や、「義理人情」や「浪花節」、そして「ウエットさ」などといった気持ちを温かく受け入れてくれる」のに対して、民主党は「しばし冷たく、横柄で、「ドライだ」と主張する人がいることが挙げられる。

第8の理由は、日本人の中には民主党の掲げる多様性と包括性に不安を覚え、より単一的で排他的な共和党の方を好む人もいるということだ。日本の指導者層は、共和党のほうが日本社会を定義する画一性、秩序、社会的連帯といった価値観とより相性がいいと考えているのだ。

最後に、「民主党は自分たちが普遍的な価値観だと考えるもの(例えば人権など)を説いてきて、日本にもそれらを遵守するように期待する(そうしなければ叱ってくる)」と見られている一方で、「共和党の中で日本と接する人たちは、北朝鮮による国民の拉致や日本による捕鯨などといった日本固有の問題に関してより大きな理解と共感を見せる」と見ていることが理由として挙げられる。

その例として、安倍首相が2013年12月に靖国神社を公式参拝したときにも、「オバマ政権とは違い、共和党政権であったならば、決して『失望』を公に表明したりしなかっただろう」と主張する日本人もいる。

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