イェール大卒、元商社マン落語家のキャリア論 【キャリア相談 特別編】第1回

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三井物産を選んだ理由

塩野:イェールに行っていちばんよかったことは何ですか。

志の春:寮生活ですね。あとは週1回、20〜30人ぐらいの少人数のディベートの授業があった。それが、今、落語につながっていると思います。

塩野:まさか、イェールのディベートが落語につながるとは。

志の春:落語って、ある意味、ディベート的な部分があるんですよ。2人の人物が「僕はこう思う」「いや、私はこう思う」というやり取りを続けていくでしょう。くだらない事柄についてだったりしますが、2人の意見がぶつかる中で価値観がずれていくのが面白い。新作落語を作るときも、ディベートの技術が役立ちますね。

塩野:そこから、どういう社会人になろうとしましたか。

志の春:卒業したら日本に帰ろうとは思っていました。自分の国のことを知らなすぎるから、もっと日本を知ってから、海外に向けて何かしようと思っていた。それで3年生が終わった夏休み、日本に帰っているときに、海外大学卒業者向けのちょっと遅い就職試験が三菱商事と三井物産で行われると知った。僕自身は卒業してから就職活動してもいいやと思っていたのですが、来年の練習のつもりで両社に行ったのです。それで三井物産に。

塩野:なぜ三菱商事でなく、三井物産に?

志の春:人事の女性がすごくきれいだったもので(笑)。

塩野:それは大事ですね(笑)。

志の春:アメリカでは、みんなガリ勉でおしゃれなんか無縁ですから。基本的にいつもスウェットを着て、化粧もしない。

塩野:シャンプーした後の生乾きの髪で授業を受ける女性もいますよね。

志の春:まあそれが色っぽい部分もありますけど。それでもう三井物産しかないと。

塩野:落語の登場人物みたい(笑)。入社後はどういうところに配属に?

志の春:最初はオフィスワーク系で金属部門金属総括部に配属され、それから半年ぐらいで鉄鉱石部の営業に移りました。

塩野:商社は楽しかったですか?

志の春:楽しかったですね。三井物産は部署によっては若い人でもひとつの商品を担当しますが、鉄鉱石部はまったくそういうことがない。扱う単位も大きいし、相手は鉄鋼6社など大企業なので、話し合いをするのは部長とか本部長レベルだし、契約は年間なので、僕みたいな下っ端の人間は別に何をやるわけでもない。

塩野:それじゃ、具体的にはどういうことをされていたのですか。

志の春:オーストラリアに鉱山があって、日々、向こうの港の船の状態などの情報が入ってくるのでそれを確かめて、製鉄会社の担当の方のところに行って、「今こういう状況です」みたいなことを伝える。だから世間話をしに行くという感じでした。

塩野:一緒に働いてらした人々はどうでしたか。

志の春:みんな鉄鉱石を愛してましたね。上司なんか、「これは豪州のなんとか鉱山で採れたヘマタイトという石なんだよ。ほら、キラキラしてきれいだろ。この中には60%の鉄が入っている。俺たちは日本にある鉄の何%を動かしているんだ」。

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