台湾「学生の乱」の陰にTPP巡る米中綱引き 2つの大国の狭間で亀裂が深まる台湾の現状

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さまざまな産業で競争関係にある韓国がすでに米国、EU、ASEANなどとFTAを結び46カ国をカバーしているのに対し、台湾の実績は7カ国にすぎない。

もともとは中南米の5カ国のみだったが、2010年以降にシンガポール、ニュージーランドとの締結にこぎ着けた。これは、ECFA締結への中国からの“ご褒美”だとされている。

台湾経済生存のための至上命令

台湾はGDP(国内総生産)の6割超を輸出に依存する。通商政策に詳しい元台湾政府高官は「台湾のグローバル戦略は非常に明確だ。第一に、中国大陸の市場を絶対に手放さず、製造基地としても活用していくということ。第二に、大陸との衝突をさけながら海外の市場を拡大していくということだ」と語る。TPPやRCEP(東アジア地域包括的経済連携)など、アジア太平洋地域での自由貿易圏構想への参加は台湾経済の生存のためには至上命令だ。

中でも本命は、より経済規模が大きいTPPだ。「中国はいずれTPPに入る」ということは台湾政府内では当然の前提。その前に台湾の加入へ道筋をつけたいという思いが、台湾政府を焦らせた。

「TPP交渉参加12カ国の過半にとって、最大の貿易相手国は中国。彼らに手を回せば、中国が台湾の加入を妨害するのは簡単だ」(同)。2001年に台湾がWTO(世界貿易機関)に加入する際も、中国は自国と近いパキスタンに反対するよう働き掛けた経緯があるという。TPPに入るには、ECFAを通じて中国との関係を安定させる必要があるというのが当局の判断だ。

一方、反対陣営は「ECFAで妥協しても、TPPに入れる保証は何もない。つねに政治的意図がある中国に安易に譲歩するのは安全保障上、問題だ」(元民進党政権幹部)と、中国への不信を隠さない。

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