JR西日本、「ダウンサイジング経営」転換の衝撃 長谷川一明社長が語るコロナ後の経営の姿

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――JR東日本は時間帯別運賃の検討を始めました。

鉄道運賃は国が上限運賃として認可したものだ。オフピークに運賃を下げる場合も国への届け出が必要になる。当社が勝手に運賃を設定するわけにはいかない。また、単に運賃を下げると鉄道会社としては減収になる。ピークの運賃を上げ、オフピークの運賃を下げてバランスをとらないといけない。

はせがわ・かずあき/1957年三重県生まれ。1981年東京大学法学部卒、国鉄入社。分割民営化後の1987年JR西日本入社。2012年近畿統括本部長、2016年副社長、2019年12月から現職(撮影:尾形文繁)

さらに、利用者によっては値下げになる人もいれば、値上げになる人もいることも考えなければならない。3年間赤字にならないと運賃値上げはできないといった国の規定もある。検討すべきことは数多い。

1日の時間帯で利用客を平準化させることも重要だが、季節による利用客の平準化も重要だ。ゴールデンウィークやお盆、年末年始といった繁忙期の運賃・料金をもっと上げて、閑散期の運賃・料金をもっと下げれば、鉄道利用が平準化されて、ずっと動きやすくなるのではないか。例えば、指定席特急料金の差は繁忙期が通常期より200円高く、閑散期は通常期より200円安いが、本来はもっと差があるべきだ。

明治以来の仕組みが障害に

――航空券はインターネットでの予約が一般化していますが、鉄道はどうですか。

コロナ後の「新常態」とどのように向き合っていくべきなのか。「週刊東洋経済プラス」では、経営者やスペシャリストのインタビューを連載中です。(画像をクリックすると一覧ページにジャンプします)

新幹線のネット予約「エクスプレス予約」のヘビーユーザーは、全体からみれば一部にすぎず、多いのは窓口で購入する顧客だ。鉄道の利用者は航空機よりもはるかに多く、そういう面で鉄道はインターネットでいろいろなことができる余地がある。

それが今までできなかったのは、窓口で紙とペンと計算機で発売するという明治以来の仕組みが基本にあるから。今の技術ならきめ細かい運賃設定も可能だ。コロナによって非接触、キャッシュレスといった意識も高まっており、鉄道運賃のあり方、発売のあり方を根本的に進化させたい。

「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では、キャッシュレス対応や終電自国の繰り上げ、シェアオフィスへの進出などについて語っている。
大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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