不動産投資法人(J-REIT)業界の見通しはネガティブ、収益性の低下に財務も悪化《ムーディーズの業界分析》

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一方で、ここ数年上昇を続けてきた不動産の資産価格が下落基調に転じたことによって、市場価格ベースのレバレッジも上昇を早めているだろう。保有不動産ポートフォリオの投資ビンテージが比較的新しい資産に偏っている発行体ほど、市場価格ベースのレバレッジが上昇しやすいだろう。毎期更新されている鑑定価格を一つの目安として比較すれば、そのような発行体においては、既にポートフォリオの簿価に対して鑑定価格が下回る状況になっている。

取引金融機関との良好な関係が維持されている発行体においては、借入金の借り換えや投資法人債償還資金の調達にまず懸念はなかろう。ただし、投資法人債の発行が再開しないまま、銀行借入への依存度が高まれば、調達全体のデュレーションが短くなっていく可能性がある。結果的に折り返しの資金調達が繁忙になると同時に、年間の資金需要が増加することで、財務指標における流動性の指標にもストレスがかかる懸念があろう。今後長期資金調達のチャンネルが広がらない状況が長引くようであれば、分析上ネガティブな要因として加わるだろう。投資法人債の償還動向においては、加えて注目を要するポイントと考えている。


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