「英語の壁」を超える人、超えない人 イェール大学流、最強の英語勉強法(3)

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まずトピックセンテンスがあって、主題があって、オピニオンがあって……と裾を順番に広げていく頭の使い方は、英語で論文を書いたり意見を出したりしていくと培われていく部分があって、そうやって書かれた文章は、実は日本語にしても読みやすい。

最後に、ここがいちばん面白かったのですが、私が10年くらいアメリカでもまれて、なんとなく感覚的にわかっていることというのは、確かにあるのです。でも、斉藤さんはそれを私よりもはるかに深く考えられていて、「それはこういうことなんだよ」とうまく言語化されているんですよ。今だからこそ「ああ、そうだったんだ!」と、すごく勉強になることがたくさんありました。

さらにすごいのが、これから英語をもっと勉強したい方々にも、「ちょうどいいツボ」を押さえているところです。私のように英語圏で10年もがいた人間から見ても面白いし、これからもっと一生懸命やりたいという人にとっても、わかりやすいようにポイントを突かれているので、これは反響があって当然だよねという印象でした。

なぜ日本の院生は「ググればわかること」を聞くのか?

入山:ティーチングの話にちょっと戻りますが、私のやっている経営学も、斉藤さんのやっていた政治学も、授業などではディスカッションをけっこうガチでやらないといけないですよね。そのあたりは、板書をしていればとりあえずなんとかなる学問分野などとは、ちょっと違います。アメリカの大学に行ったとき、そのあたりについてはどうお感じでしたか?

斉藤:そこは大学の教育のあり方全部にかかわってくると思うんですけど、日本の大学院生、大学生、中高生、小学生、みんな「問いかけ」を発するのが下手ですよね。

実は、僕が日本の大学に戻らなかった理由のひとつもそこにあります。日本の学会の年次大会とかで研究報告をしても、ググれば一発で解決するような質問をする院生ばかりだという印象がありました。

入山:それって、学者としてはいちばん大事なことですよね。そう考えると、英語教育だけじゃなくて、日本人の根本的な「ものの考え方」みたいなところから変える必要があるということでしょうか。

入山 章栄(いりやま あきえ) 早稲田大学ビジネススクール准教授(専門は経営戦略論および国際経営論)。1996年、慶應義塾大学経済学部卒業。1998年、同大学大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカーや国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2003年に同社を退社し、米ピッツバーグ大学経営大学院博士課程に進学。

 斉藤:僕自身、自分の中高生時代を振り返ってみても、あまりいい教育を受けたような気がしないんですよ。大学生の頃にカリフォルニア大学サンディエゴ校に留学して、初めて、「ああ、これが学びの場か」と思うような経験をしました。

一時期、議員として政治の場にいたこともあるのですが、そのときやりたかったのも教育と農業とインフラ政策でした。政治からのアプローチではいったん挫折した人間ですので(笑)、今度はマーケットからちょっと攻めてみたいなという思いがあったのです。

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