若者に蔓延する「社会主義への憧れ」が危険な訳 「隷従への道」「アイデアのつくり方」を読み解く

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専門分野外のことについて語るときも、専門分野がつねに根底にある。そして、そのように生まれた考え方やものの見方を、新しい組み合わせ、新鮮なアイデアとして受け止めてくれる人は、想像より多くいるかもしれない。

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この点を踏まえておくと、古典や教科書をひもとく際にも、読書や学びを、ビジネスや日常に生かす道が浮かんでこないだろうか。本書からは、アイデアを生み出す方法に加え、こうした学びのモチベーションをも得られる。ヤングは、アイデアを生み出す力は、後天的に育むことのできる能力であるとも言っている。

次に取り上げたいのは、経済学者フリードリヒ・ハイエクの著書、『隷従への道』だ。第2次世界大戦終結前の1944年に書かれた本書では、西欧諸国の人々が社会主義に傾倒していくことへの憂い、そしてその危うさが訴えられている。

2020年の今、世界は変化の方向性を模索している。世界の抱える課題は多岐にわたり、行き過ぎた金融資本主義による格差や、環境破壊、さらに今回のコロナ禍で世界的に広がる感染症の脅威が加わった。

資本主義への信頼が揺らいでいるのは確かだ。だが僕は、若い世代を中心に、安易に社会主義に飛びつく人が増えてきているのを危険なことだと考えている。従来の資本主義に問題があるからといって、「では、社会主義だ!」という発想になるのは、さらに問題だ。

社会主義を目指した先に待つのは全体主義

ハイエクが『隷従への道』を書いた当時、全体主義ファシズムに対する警戒は広がっていたものの、社会主義に対しては、「全体主義とは似て非なるもので、ある意味で最先端」というイメージが知識人にすらあったという。

しかし彼は、社会主義への道というのはまさに「隷従への道」であり、社会主義化を目指した先に待つのは全体主義でしかないと喝破した。個人の自由、政治的な自由が失われることに無自覚のまま、社会主義の美辞麗句に踊らされたとき、どんな悲劇が待っているか。本書は一般向けに極めてわかりやすく書かれている。

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