アルファードがヴェルファイアの7倍売れる謎 車種リストラを目論むトヨタのしたたかな策

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「アルファードが現行型にフルモデルチェンジして、フロントマスクの存在感を強めたことで、リセールバリュー(中古車としての再販価値)も高まった。従来はヴェルファイアが高値で取引されたが、現行型ではアルファードが上まわる。コロナ前はアルファードの中古車輸出が活発で、国内の流通台数が減っていたために中古車価格を高めた事情もある。その結果、お客様が購入して数年後に売却するとき、アルファードなら高い金額が示される。購入後の資産価値を高く保ちやすいことも人気を高めた」

また、トヨタの販売体制が変わったことも影響した。冒頭で述べたとおり、2020年5月から全国的に全店全車種併売(東京地区は2019年4月より全店扱い)となったが、これに関してネッツ店は以下のようにコメントする。

全店併売に向け2019年12月の一部改良で「ヴェルファイア」のエンブレムがネッツからトヨタマークになっている(写真:トヨタ自動車)

「以前はヴェルファイアからアルファードへ乗り替えるには、販売店をトヨペット店に変える必要があったが、今は同じ店舗で購入できる。そのために『フロントマスクが気に入った』という理由で、ヴェルファイアからアルファードに代替えするお客様が増えた」

また、今まで両車を扱っていなかったトヨタ店からは、こんな話が聞けた。

「新規のお客様は、人気のアルファードを買うことが多い。販売店もアルファードを推奨する。数年後にヴェルファイアよりも高値で下取りできる可能性が高く、代替えを促しやすくなる。『今なら250万円で買い取るので、乗り替えのチャンスです』と提案すると、新車を買われるお客様が多い。高く買い取れる車種をすすめることは、販売店にとって大切だ」

アルファードの急伸はトヨタの狙い通り?

全店全車種併売になってアルファードの売れ行きが伸びたことは、ヴェルファイアと比べた販売推移からもわかる。2020年1~4月のアルファードの登録台数は、ヴェルファイアの2.6~3.5倍だったが、全店が全車を扱うようになった5月は、4.2倍に増えた。6月は約6倍、7月は前述の通り約7倍に達する。

以上のようにアルファードは、2015年のフルモデルチェンジでヴェルファイアとの販売格差を縮め、2017年のマイナーチェンジで逆転させ、2020年の全店/全車販売によって販売格差を7倍まで広げた。

この推移はトヨタの狙い通りだろう。トヨタは生産と販売の効率を向上させるため、車種数を削減する方針を打ち出している。販売の合理化も考えて、全店が全車を売る体制も実現させた。

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