オバマも夢中! 1000倍返しの政治サスペンス 大統領が「ネタバレしないで」とツイートした【前】

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半沢は「社会正義」、フランクは「私怨」のための復讐

ちなみに、やられたら1000倍返しといった勢いのフランクの復讐物語は、日本の人気ドラマ「半沢直樹」を想起させるかもしれない。が、半沢も私怨がないわけではないが、基本的に社会正義のために組織なり権力なりに闘いを挑んでいる。一方、フランクはまっさら自分の野心のためのリベンジだから、作品が持つ本質的なカタルシスはまったく別ものだろう。

そもそも、本作は車に轢かれた近所の住人の飼い犬を、フランクがひそかにとどめを刺すシーンから幕を開ける。いずれはフランクが一線を越える瞬間を示唆するようでもあり、しょっぱなから血生ぐさい匂いが漂う。いや、それ以前にリンカーン大統領像を模した本作のキービジュアルで、フランクの手は血にまみれているところからしても、何をか言わんやである。

当然ながら、フランクが相手にするのもまた一筋縄ではいかない、やり手の策士たちだ。外堀から攻めていく段階では、フランクにとっては物足りない相手もいるが、さすがにホワイトハウスの中枢に近づくにつれて、敵もさるもの引っかくもの。フランクは、しばしば勝率五分五分か、それ以下といった懸けを強いられる。

この政治的な駆け引きが、実に面白い。ワシントンは「情報戦と広報戦のバトルフィールド」だと言われる。どれだけ相手の情報をつかみ、それらを巧みに利用して情報操作を有効に行うことができるかが、政治生命を左右するカギと成りうる。

そこには、しばしばハッタリも含まれる。もし相手がそのハッタリに乗らなければ、仕掛けた側は一巻の終わり。ポーカーフェイスでハッタリをかますフランクや政治家たちのパワーゲームは、極上の心理戦だ。このスリルは本作の醍醐味のひとつである。

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