オリンパス撤退、深刻化するカメラ市場の苦境 市場は縮小、次の焦点は赤字転落のニコンに

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ニコンが厳しいのは市場環境のせいだけではない。縮小するカメラ市場の中でも人気が比較的高かったミラーレスカメラでの出遅れが響いている。小型軽量で高画質の写真が撮れるミラーレスは一眼レフカメラの需要を浸食し続け、2018年には国内出荷台数でついに一眼レフを逆転した。

一眼レフとの食い合いを恐れていたニコンが重い腰をようやく上げ、ミラーレス市場に本格参入したのは2018年のことだった。

だが、時すでに遅し。2019年のミラーレスの生産台数は首位のソニーが165万台に対して、ニコンはわずか28万台。ライバルのキヤノンも94万台を生産しており、ニコンの一人負けは鮮明だ(テクノ・システム・リサーチ調べ)。

ソニーは「α」シリーズで独走

ニコンが収益柱の一眼レフで展開するフルサイズモデルとの食い合いを警戒して慎重だったのに対して、ソニーは一眼レフ製品を持たないことを逆手に取り、フルサイズのミラーレス機種やレンズに集中投資して一気にラインナップを拡大した。

2013年には世界初のフルサイズミラーレス「α7」を、2017年には「α9」を発売し、2019年のミラーレスの世界生産台数シェアはソニーが41.8%と独走している(テクノ・システム・リサーチ調べ)。

ミラーレスはレンズから入った光をイメージセンサーで電気信号に変え、ファインダーに表示するため、一眼レフと比べて撮影に若干の遅れが出てしまう。スポーツ競技など一瞬をとらえるような撮影には不向きだったが、ソニーはその欠点を「α9」で克服。高速処理を可能とし、一眼レフと同等以上の性能を実現した。

テクノ・システム・リサーチの大森鉄男シニアアナリストは「α9が一眼レフにはない撮影体験を実現したことでカメラ市場の構造が変わり、(ミラーレスで独走する)ソニーが(デジカメ市場全体を牽引する)リーディングカンパニーになった」と話す。

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