連続減益のドコモ、2015年3月期も厳しさ 前期はiPhone導入でも増益ならず

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さらに、インドの投資案件からの撤退も発表した。09年から合計2667億円を出資するインド、タタ・サービシズリミテッドの保有株式の売却に向けてオプションを行使することを決めている。同オプションはやや複雑で、タタ社が14年3月期に所定の業績を達成できなかった場合、取得価格の50%、もしくは公正価格のいずれかで売却できる“買い手の仲介を要求できる”というものだ。保有株式については、これまでも減損を繰り返したため、現在の簿価は448億円。ドコモは株式を売却した場合、今15年3月期中に数百億円程度の特別利益が計上される可能性がある。

タタ社の業績が発表されるのは5月中旬の予定。「競争激化に加えて通信行政の混乱が影響した。保有していた電波が取り上げられ、利用料も高騰した。これは想定外だった。中長期の成長性は変わらないと思うが、われわれが当初予想したものではなかった」(加藤社長)。

2014年3月期の業績が未達に終わったことや、海外投資の失敗の責任を明確化するため、ドコモは代表取締役以下、執行役員などの賞与カットを決めた。社長、副社長、相談役に関してはほかの対象者より減額幅を多くしているという。カット率について、加藤社長は「公表はしないが、かなりのものです」とした。

今期も厳しい

続く2015年3月期も厳しい環境は変わらない。パケット通信料金の増加やネットワーク関連などでコスト削減を実施するが、端末の割引費用は1300億円増加し、音声通話のかけ放題プランの導入による800億円の減収も響く。営業利益は7500億円と700億円の減益となる見通しだ。

それでも、計画達成のハードルは高い。契約純増数は370万件と倍以上の設定だ。これは主にM2M(機器間の無線通信)関連の通信モジュールの増加を見込んだものだが、スマホ契約数も大幅に伸ばさなくてはならない。販売台数においても、スマホは今期1530万台と前期の1378万台からすれば高い水準だ。全体の販売が鈍化する中では挑戦的な数値と言えるだろう。

加藤社長は「今期は一度しゃがんで、再び成長軌道に戻していきたい」と話したが、新料金プランや次世代の通信規格「LTEアドバンスト」のアピールなどでユーザー開拓を進められるのか。第1四半期(4~6月期)決算から、結果が厳しく問われそうだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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