赤字転落のHIS、「GoToに期待」の厳しい台所事情 コロナ前の順風満帆が一変、膨らむ財務懸念

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一方で、コロナ影響の長期化シナリオを踏まえた資金繰り懸念にそなえ、三井住友銀行など複数行と330億円のコミットメントライン(融資枠)を設定した。「銀行にお願いして、借入金の返済を何とか引き延ばしていただく」(中谷氏)。当面は資金ショートへの備えを優先する姿勢だ。

コロナ前のHISは順風満帆だった。旅行業界ではアメリカのエクスペディアを筆頭とするネット専業の旅行会社がシェアを拡大し、店頭販売を前提とした従来型の旅行会社の顧客を奪っている。日本国内でもJTBやKNT-CTホールディングスといったHISのライバル勢の売上高は、ここ数年は横ばいがやっとだった。

カナダや香港企業を相次いで買収

ネット専業の攻勢にさらされる事情はHISも同様だが、得意のヨーロッパ方面などへの日本人海外旅行の需要を取り込み、海外旅行会社への積極的なM&A(企業買収・合併)が寄与した。

HISは世界全体における旅行市場の成長に着眼し、2017年10月期から3年間でカナダ企業3社、香港企業1社を矢継ぎ早に買収。海外法人の売上高を2016年10月期の518億円から2019年10月期には1803億円へ急拡大させた。

国を挙げた施策による訪日外国人の急増を商機と捉え、ホテル事業も積極化。運営ホテル数を2016年10月期の12軒から2019年10月期には36軒まで増加させ、業績を拡大した。

まさに近年のHISの躍進を支えてきた旅行事業とホテル事業だが、どちらも自然災害やテロなどのイベントリスクで需要が急減するリスクがある。新型コロナはこのリスクを改めて浮き彫りにした格好だ。

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