社員は会社に「不公平や差別」を問いただせるか セールスフォースCEOが葛藤する社会的責任

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折しもアメリカでは、アフリカ系アメリカ人が警察官に首を絞められて死に至った内容の動画が拡散し、各地でデモが起きるなどしている。そうした社会の動きに対し、企業や経営者はどう発言し、振る舞うべきだろうか。

身近なところで、就職活動中の学生の声に耳を傾ければ、「従業員に対してブラックな企業はもちろん嫌で、社会に対しブラックな企業にも就職したくない」という雰囲気がある。

ベニオフも社会の注目を集める「ロックスター経営者」の1人であり、本書では彼自身のツイッターでの「炎上」の経緯やツイッターの創業者兼CEOのジャック・ドーシーとのツイッターでの舌戦の顛末についても書かれている。

ちなみに、本書ではセールスフォースによるツイッター買収計画も開陳される。

日本企業への敬意と現状

注目を集めるシリコンバレーのロックスター経営者であるベニオフは、この手の経営者には珍しく、大学を中退しておらず、専攻もコンピュータ・サイエンスでないところは、親近感が持てるかもしれない。ベニオフはセールスフォースを起業する前にはオラクルで働いている。

日本の読者は、ベニオフが研究し、敬服している企業がトヨタ自動車であり、CEOの豊田章男氏であることに目をとめるだろう。本書でも、トヨタに対する考察と豊田章男CEOとの出会いとビジネスの提案についての思い出が語られている。

1980年代の日本を知るシリコンバレーのテック経営者によくあることだが、「効率的で美しく優れたモノづくりの才覚」を持つ日本企業、「イノベーションとデザインの達人を大切にしている国」である日本への愛情を語り、創業1年後には初の海外拠点として東京にオフィスを構えたという。

ベニオフが憧れた日本企業であるが、2020年代の日本企業の風景はいまだに、年配の男性ばかりの役員会議と、平然と「女性ならではの視点で」と男性中心に語ることを許す環境である。

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