「スタバのコーヒー」少し割高でも売れまくる訳 安易に「値下げ」してもお店が疲弊するだけ

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しかも、お店の雰囲気を陽気なハワイアン風にしたり、オリジナル商品を開発して人気を得るなど、競合店に負けない「価値」をつくり続けています。ただ安いだけでなく、食料品スーパーとしてつねに魅力的なのです。

安売りでお客のハートはつかめない

あるスーパーがチラシで告知をして、特売をしたとします。牛乳が100円、玉子10個が50円だとしたら、多くのお客さんが訪れるでしょう。

では、チラシの特売で来たお客さんは、そのスーパーのどんな「価値」によって来たのでしょうか?

そのお客さんはおそらく、競合がもっと安い価格で特売をしたら、競合店に行ってしまうでしょう。「安売り」でお客さんをつなぎとめることはできないのです。

「じゃあ、『安さ』を全面に押し出しているドン・キホーテはどうなのか 」と思うかもしれません。総合ディスカウントストアのドン・キホーテは、確かに自らを「驚安の殿堂」と呼んでいます。

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ですが、決して「価格が安いだけのお店」ではありません。お客さんをつなぎとめているカギは、「宝探しをするような買い物の楽しさ」です。何度行っても新しい発見がある楽しさは、お客さんにとってとても魅力的でしょう。これがドン・キホーテにとっての「価値」になります。「価格の安さ」も1つの要因なのは否定しませんが。

安易な安売りでお客さんをつかみ続けることはできません。お客さんが納得する「価値」を探し出し、その「価値」に共感してくれる人にしっかり訴求していくことが重要です。

安易な値下げはブランドを毀損してしまいます。値下げは最後の手段です。値下げをする前に、「売れない原因は何か」を考えて対策を取ることが必要です。

乙幡 満男 株式会社ブランドテーラー代表取締役

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おとはた みつお / Mitsuo Otohata

1974年生まれ。日本マーケティング学会会員。日本ブランド経営学会会員。大学卒業後、メーカーにて商品開発を担当。ブランド全体の売上・利益向上に貢献し、世界最大手のブランドコンサルティング会社が主催する「Japan Branding Awards」2018年最高賞受賞に導く。2018年にブランド開発及び商品開発のコンサルティング会社を創業し、現在、大手流通やメーカーなど様々な企業のブランドコンサルタントとして活動中。セミナーや執筆活動も行っている。

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