3つの実績を挙げた1年目のオバマ外交--ジョセフ・S・ナイ ハーバード大学教授

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 評論家は、オバマ大統領は口先ばかりで、行動が伴わないと批判する。

彼らは、オバマ大統領を実績ではなく、約束によってノーベル平和賞を受賞したロックスターであると見ている。また大統領の人気を冷笑し、中東問題は解決困難なままであり、北朝鮮の核問題やイラク・アフガン戦争は解決しておらず、イラン問題の解決も困難な状況にあると指摘している。

しかし、まじめな人なら誰も、大統領が短期間にすべてを実現できるなどとは期待しないだろう。ブッシュ政権のハードパワーを使った外交政策でも、問題を解決することはできなかった。

将来の評価を決めるアフガニスタンの行方

オバマ政権は発足後1年の間に重要な実績を挙げた。

第一に経済危機を乗り切った。経済顧問たちはオバマ大統領に、1930年型の大恐慌が起こる可能性は30%以上あると説明していた。恐慌を阻止できなかったら、他の事柄もさらに悪化していただろう。恐慌を回避するためには国内での景気刺激だけでなく、国際的な協調も必要だった。アメリカの保護主義は予想に反して30年代よりもはるかに抑制されている。

さらにオバマ大統領は危機を利用して、何年も議論されてきたが実現できなかった事柄を実現している。つまり、G8を、主要な途上国を組み込んだG20という幅広い制度的な枠組みに変えたのだ。

次にオバマ政権は対中政策でも成果を挙げた。今まで財務省の主導で行われてきた米中経済戦略対話を、気候変動など多国間問題を担当する国務省との共同主催に拡大した。懐疑的なメディアとは逆に、11月の北京でのオバマ・胡錦濤首脳会談は成功裏に終わった。

同時に大統領は、日豪との密接な同盟関係とインドとの友好関係を維持することが、中国に対抗するハードパワーを維持するのに役立つことも認識している。

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