コロナ患者を地域で診る「相模原モデル」の苦闘 北里大学病院長に聞く診療体制の難しさ

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――神奈川県によれば、北里大学病院が、中等症患者を受け入れる重点医療機関に認定されたのは5月24日でした。認定にはそうした経緯があったのですね。

岩村 以前、相模原市内で、2次救急の患者の受け入れ先が見つからずに複数の病院をたらい回しにされた事例があった。それを機に、3カ所の病院で受け入れを断られた患者さんはすべて当院が引き受け、初期治療をしたうえで対応できる病院に転院してもらう「相模原ルール」が作られた。

「コロナ患者受け入れと病院経営の両立は厳しい」と語る岩村正嗣・北里大学病院長

新型コロナ中等症で2次救急相当の患者の受け入れ先が見つからないことにでもなれば、すべてが当院に集中する。そうなると一般の救急で構築していた「相模原ルール」の負の部分が顕在化してしまう。重症患者を診ているうえに、中等症患者もとなると、救急を中心に当院の医療体制の崩壊は避けられない。

そこで、閉院した旧東病院を中等症の患者のために再稼働させる一方、当院を含む地域の医療機関みなで力を合わせて中等症患者に対応しませんかという提案をした。

コロナ対策医療のモデルケースに

――画期的な地域連携の取り組みですね。

岩村 重点医療機関で中等症の患者を受け入れる場合、本来であれば、スタッフは当該の病院内で確保しなければならない。ただ、ふだんからぎりぎりで病棟を運営しているため、当院としても旧東病院にさらにスタッフを振り向ける余力が乏しかった。

そこで、当院が中心になって中等症の患者を旧東病院で引き受ける一方、市内の病院の医師に来てもらって当直や週末の日直勤務をお願いできないかと提案した。市内の病院としても、院内感染のリスクを軽減することができ、風評被害も免れる。うまく運営できれば、地域連携による、コロナ対策のモデルケースになりうると考えた。

――設備の改造など投資コストの負担は。

岩村 電気や水道、酸素の配管も一度止めた状態だったので再稼働にはハード面の整備だけでも大変な費用がかかった。県からの補助を得て対策を実施し、中等症患者の受け入れに備えた。

――現在の受け入れ体制は。

岩村 50床を確保している。看護師は、現在閉鎖しているリハビリ病棟のスタッフを配置している。医師は主に内科の4科から出してもらうようにしている。ただ、いったん感染が落ち着いたこともあり、患者の受け入れは7月12日までに累計11人にとどまっている。

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