一見好調なアメリカ株が抱える「3つの懸念」 「今後も上昇継続」というシナリオでいいのか

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また、人種差別問題を起因とした暴動が広がったこと、そして公衆衛生政策の失敗も重なり、トランプ大統領の支持率は一段と下がっている。

トランプ大統領の政治的求心力が弱まり、追加財政の発動可能性が低くなる恐れがある。まだ11月の大統領選挙まで時間があるし、民主党のバイデン候補にも弱点は多いため、大統領選挙の行方は依然流動的と筆者はみているが、法人税率引き上げを掲げるバイデン氏が大統領となり民主党が議会を制する展開となれば、アメリカ株市場の痛手になるだろう。

銀行監督政策が株式市場にとって悪材料に

最後の3つ目は、あまり話題にはなっていないが、筆者は、銀行監督政策が株式市場にとって悪材料になるリスクがあると見ている。先述した通り、FRBによる強力な金融緩和徹底は大きな株高要因だろう。

だが、6月25日に発表された大手銀行に対するストレステストでは、経済停滞が長期化した際に、銀行資本が大きく低下するリスクがFRBによって明示された。FRBを含めた銀行監督政策が、リスク顕在化時に資本不足への警戒を強めれば、これをきっかけに、金融機関の融資姿勢が厳格化するリスクがある。

6月半ばから、アメリカ株式市場のこれら強弱材料への思惑が交錯してレンジ相場となっているが、最近の値動きをみると、金融市場はリスク要因に鈍感になり、市場心理が楽観方向に傾いているように見える。

今後の株式市場の先行きを考える上で、新型コロナウイルスの感染者拡大と追加財政政策の不発によって、7月以降の経済復調にブレーキがかかるシナリオを警戒すべきと考えている。

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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