婚活で「既婚者というババ」を引いた彼女の決断 妻からの500万円の慰謝料請求に2人は…

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「だったらきちんと別れてから申し込みをし直してください。私は私で婚活は続けます」

そう言って喫茶店を出た真由さん。ここまでは正解である。しかし、真由さんも信二さんも詰めが甘かった。

「すぐに信二さんは奥さんに離婚を切り出したそうです。奥さんの答えは、『子どもがいなかったらあなたとはとっくに終わっていた』でした。だから私も安心して、彼と会っていたんです」

安心するのが早すぎる!と思うのは筆者だけではないだろう。驚きから立ち直った妻は離婚歴のある友人に相談し、探偵を雇った。信二さんの部屋に盗聴器をしかけて真由さんとの電話を盗聴。尾行して判明した真由さんのマンション前にビデオカメラを設置し、信二さんが浮気をしている証拠映像を録画した。その証拠をもとに、真由さんは妻の弁護士を通じて500万円もの慰謝料を請求されたのだ。

迷いを払拭したのは「逃げずに現実と向き合う姿勢」

ここでも信二さんは逃げなかった。自分も弁護士を雇い、婚活サイトで知り合った独身の真由さんは自分が既婚者だと知らなかったとし、責任は全面的に自分にあると主張。約1年かけて交渉し、自宅と自家用車に加えて慰謝料300万円、そして子ども1人につき毎月7万円の養育費を支払うことを約束した。信二さんは大企業の管理職であり、それだけの経済力はあるのだ。

自営業で大きく稼いでいる親族に囲まれて育った真由さんは、信二さんのステータスや収入に心ひかれたわけではない。同じ会社で20年以上働いていても力を抜こうとしない彼の姿勢に惚れたのだ。しかし、「彼が離婚したところで今さら前に向けるのか?」と迷いはあったと明かす。

「年上の男友達に相談しました。『そんな男とは別れたほうがいい』と心配してくれた人もいたけれど、ある人がこんなことを言ってくれたんです。『そういうときに男はみんな逃げるものだよ。彼は逃げずに現実と向き合って、真由ちゃんと一緒にいようとしている。その姿勢は否定できない』と。いろいろ問題はある人ですが、その部分は確かにキラリと輝いていると思いました」

信二さんは夫婦関係や子育てという現実からは逃げたと言えなくもない。しかし、お互いに愛情を失った配偶者といつまでも一緒にいてもいいことはないだろう。いっそのこと別れてくれたほうが子どもたちもさっぱりするかもしれない。では、信二さんは真由さんとならば愛のある家庭を築けるのだろうか。

「私は損しやすい性格をしています。ぶっ飛んでいるというか、かたすぎないというか。素直に生きている私を彼は好きなのだそうです」

よく言うよ……。部外者としてはちょっと呆れてしまうが、本人たちは今のところ楽しく暮らしているようだ。信二さんのボーナスを費やして高額の不妊治療を受け、4度目でようやく妊娠をした。

生まれてくる子どもが成人する前に信二さんは定年を迎える。仕事にも家庭にも誠意を尽くし、活路を開くことを祈るばかりだ。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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